少子高齢化によって小売業はお客さんと従業員の減少に直面する

少子高齢化によって小売業はお客さんと従業員の減少に直面する

厚生労働省が発表した2017年の人口動態統計の年間推計によると、出生数は94万1,000人、死亡数は134万4,000人となっています。出生数から死亡数を引いた自然減が40万人を越えるのは初めてのことで、日本全体で解決しなければならない社会問題です。

小売業の立場からすると、お客さんの減少に加えて、従業員の減少も同時に発生するため、売上とアルバイト・パートを確保することが難しくなります。ネットショップの脅威に頭を抱えているところに、少子高齢化の問題も出てきて大変になりますが、テクノロジーを活用した店舗の効率化という新しい希望もあります。

死亡数から出生数を引いた自然減は過去最大の約40万3,000人

厚生労働省が発表した2017年の人口動態統計によると、国内で生まれた赤ちゃんの人数は94万1,000人となっています。昨年はついに年間100万人を割り込んでしまったということで話題になったのですが、2年連続で年間100万人を割り込んだ結果になります。

2016年の出生数は976,979人ですから、今年の出生数は前年と比較して約35,000人減少していることになります。今後も出生数の減少が続くことが確実視されていますから、毎年3万人以上出生数が減り続けるというのはショッキングな事実でもあります。

死亡数は134万4,000人となっていて、前年の130万7,748人から3万6,000人近く増加してます。こちらの数字は各年代の人口数に関係しているので、長期に渡って少子化が続いている状況を考えると、年間の死亡数も減少して行くのではないかと考えられます。

1年間にどれくらいの方が亡くなっているのかを普段の生活の中で意識することはあまりありませんが、134万4,000人という数字は大きいです。10年間で1,344万人の方が亡くなる計算ですから、20年、30年で考えると途方もない人数になってしまいますが、人口減少の影響は社会のあらゆる場面で見られるようになると思います。

死亡数134万4,000人から出生数94万1,000人を引いた自然減は、過去最多の40万3,000人になるとの見通しです。自然減は11年連続で続いていて、今年の自然減は前年と比較して約7万人(22%)も増えており、人口減少のペースは年々加速している状況です。

亡くなった人数を生まれて来る人数で補えればいいのですが、日本の現状はそうなっていないため、社会問題としてよく話題になります。高齢者には健康で長く働ける環境を提供する、若い世代には不安なく安心して子供を育てられる環境を提供する、この2つが日本の人口減少問題を解決するためには不可欠だという意見が多いです。

売上を失わないためには若い世代のお客さんを取り込む必要がある

小売業の立場からすると、死亡によって高齢者の既存のお客さんを失い、出生によって若い新しいお客さんを得る形です。亡くなる人数が生まれて来る人数よりも多いですから、失ったお客さんを補充することができず、お客さんが減少することになります。

高齢者のお客さんは実店舗だけで買い物をして来ましたが、若いお客さんは実店舗とネットショップの両方のお店で買い物をします。高齢者のお客さんの売上に頼って来た小売業は、若いお客さんを獲得できなければ、売上の減少を補うことができません。

人口の自然減が続くことが見込まれている現在の状況を考えると、高齢者のお客さんを多く抱えている、実店舗での歴史が長い小売業は苦戦するのではないかと予想できます。具体的な業種としては、百貨店、総合スーパー、ホームセンター、家電量販店、ディスカウントストアなどが挙げられます。

百貨店、総合スーパーは難しい状況にありますが、お店で買物をしていても、若いお客さんを獲得できていない感じがします。店員もお客さんも高齢化していて、高齢者が買い物がしやすいお店になっているので、若いお客さんの興味を引くことが難しいです。

若い世代のお客さんを獲得するために必要なのはテクノロジーで、ネットショップやショッピングアプリは不可欠になります。高齢者のお客さんに頼る業種ほどテクノロジーへの投資が遅くなりがちで、今のところは大きな影響は見られないのですが、テクノロジーへの投資が小売業の将来を大きく左右するのではないかと思います。

先日、イオンは中期経営計画を発表しましたが、その中に、今後の3年間で、IT・デジタル・物流へ5,000億円を投資する計画があります。イオンは総合スーパー事業の利益が伸び悩んでいますが、IT・デジタル・物流へ大型投資を行うことで、お客さんにどのような新しい付加価値を提供するのか注目が集まります。

店舗の生産性と従業員の待遇を改善するためのテクノロジーの活用

アルバイト・パートの採用が難しいことはよく知られていますが、ニュースを見ていると、大手チェーン店であっても採用は難しいようです。資本に余裕がある大手チェーン店であっても、アルバイト・パートに好待遇を提示するわけではありませんから、働く側からするとあまりインセンティブを感じないのかもしれません。

2017年の出生数は94万1,000人ですが、20年前の1997年の出生数は1,191,665人となっていて、20年間で約21%減少しています。人口の自然減によってお客さんの数が減少しますが、合わせて働き手の数も減少するので、小売業はお客さんの減少と働き手の減少の両方に対処しなければならない状況です。

小売業がアルバイト・パートの人材をしっかりと確保するためには、高い時給、交通費の支給、柔軟なシフト、社員割引など、待遇の改善が重要だと思います。これまではどの小売業で働いても、アルバイト・パートの待遇には大きな差がありませんでしたが、これからはアルバイト・パートの待遇にも差が出てきます。

地域密着のお店作りを目指す企業が増えていますが、地域密着を実現するためには、地元の従業員に長く働いてもらわなければなりません。これまでは日本全国を転勤する正社員が優遇されて来ましたが、アルバイト・パートの待遇を改善して能力を発揮してもらえれば、お店の売上を伸ばす余地はあります。

アルバイト・パートの待遇を改善するためには原資が必要ですが、そのためには店舗の生産性を上げる必要があります。小売業の店舗で使うテクノロジーは次々と新製品が登場していて、テクノロジーを活用した店舗の生産性の改善には大いに期待できます。

ショッピングアプリ、カメラを使った顔認証、セルフレジ、ロボットによる在庫管理など、店舗で発生する従業員の小さな業務を減らすテクノロジーが多いです。また、「Amazon Go」のようにレジ業務を完全に無くしてしまうものもあり、レジで働く従業員を減らしたり、他の業務を担当してもらうことで、店舗の生産性が改善できます。

ネットショップの台頭に加えて少子高齢化も小売業には脅威

ここ10年くらいの小売業の問題はAmazonや楽天などのネットショップの台頭で、実店舗はどうやってネットショップに対抗するのかというものです。経済産業省の資料によると、日本のBtoCのEC化率は年々上昇していて、2016年は5.43%となっています。

2010年の2.84%から緩やかに毎年上昇を続けていて、この傾向は今後も5年、10年と続いて行くことが予想されています。Amazonが従来の小売業に大きな影響を与えるようになっていることを意味する「アマゾン・エフェクト」という言葉も登場していて、ネットショップが従来の小売業に与える影響も強まる一方です。

ネットショップへの対応をどうするかという中で、ここ数年で少子高齢化も問題視されるようになりました。「ネットショップ+少子高齢化」のセットが小売業が対応しなければならない課題で、小売業を取り巻く環境はさらに難しくなっていると言えます。

百貨店と総合スーパーは難しい状況にありますが、これにはネットショップの脅威と少子高齢化の両方が影響していると考えています。ドン・キホーテとユニーは共同で店舗を運営する計画がありますが、ユニーはドン・キホーテの若いお客さんを取り込むことで、高齢化している総合スーパーの店舗を若返らせる狙いがあります。

高齢者のお客さんは何もしなくても実店舗で買い物をしてくれましたが、若いお客さんは高齢者のお客さんとは違います。若いお客さんに実店舗で買い物をしてもらうには、ネットショップやショッピングアプリを使った便利な買い物体験が求められます。

若いお客さんは高齢者のお客さんよりも人口が少なく、持っているお金も少ないにも関わらず、来店してもらうためにはテクノロジーへ投資をしなければなりません。テクノロジーへの投資を回収するためには、便利な買い物体験でお客さんを囲い込んで、来店回数、購入点数を増やす必要があります。