JR東日本とサインポストがJR大宮駅で無人レジの実証実験

JR東日本とサインポストがJR大宮駅で無人レジの実証実験

JR東日本とサインポストが連携して、JR大宮駅で無人レジのコンビニの実証実験を行っています。サインポストが開発した無人レジ「スーパーワンダーレジ」は店内に複数のカメラを設置して、お客さんの買い物を監視することで、無人レジを実現しています。

「スーパーワンダーレジ」は2018年の春に販売される予定で、小売業の生産性アップに貢献することが期待されます。「スーパーワンダーレジ」が活躍できそうなのが小型のディスカウントストアで、お店の生産性を高められるのではないかと予想しています。

無人レジに期待されるレジの混雑の解消と人手不足への対応

JR東日本とサインポストは11月20日から26日までの間、JR大宮駅のイベントスペースで、人工知能を活用した無人レジの実証実験を行いました。サインポストが開発する無人レジ「スーパーワンダーレジ」は、JR東日本のベンチャー育成プログラム「JR東日本スタートアッププログラム」で最優秀賞を受賞した実績があります。

JR東日本はサインポストの無人レジの技術を、グループ会社が運営しているコンビニへ導入することを検討しています。JR東日本が無人レジに期待していることは、混雑時におけるレジの待ち時間の短縮、人手不足に対応するための店内業務の削減です。

無人レジ「スーパーワンダーレジ」では、多くのカメラでお客さんの動きを撮影することで、お客さんの買い物内容を把握する仕組みです。お客さんが手に取った、買い物かごに入れた商品をリアルタイムで人工知能が識別して、その都度、金額を集計します。

お客さんがお店の出口に向かうと、出口に設置してあるディスプレーには、買い物をした商品の合計金額が表示されています。お客さんは電子マネーのSuicaをかざして決済を行うと、出口のゲートが開いてお店から出ることができるようになります。

無人レジを使ったコンビニの実証実験は世界中で行われていて、米Amazonの「Amazon Go」、国内ではローソンがスマートフォンを使った無人レジを検討しています。日本では人手不足でアルバイト・パートの採用が難しくなっていることもあり、無人レジを導入したい小売業も多いのではないかと思います。

JRの駅の中にあるコンビニの場合は、お客さんが買い物に使える時間も短いため、レジの混雑はお店の売上を減らしてしまいます。無人レジには人件費削減のイメージが強いですが、レジの混雑を解消することによる、売上アップへの期待も大きいです。

「スーパーワンダーレジ」はカメラの画像だけで商品を識別

サインポストの無人レジ「スーパーワンダーレジ」は、お客さんの識別を画像で行う仕組みになっています。入店時にお客さんの顔を識別して個別のIDを割り当て、その後はお客さんの顔と商品をセットにすることで、お客さんそれぞれの買い物を監視します。

「Amazon Go」や中国の無人コンビニでは、アプリのアカウントでお客さんを識別しているため、「スーパーワンダーレジ」は両者とはお客さんの識別方法が異なります。アプリがないとお店に入れない仕組みの場合、買い物ができるお客さんを制限してしまいますが、「スーパーワンダーレジ」は誰でも買い物ができるようになっています。

お客さんは商品を買い物かごに入れたり、手に取って棚に戻したりしますが、これらすべての行動をカメラの画像で識別します。お客さんが商品を買い物かごに入れると買物金額にプラスする処理を行い、棚に戻すと買物金額からマイナスする処理を行います。

店内のお客さんの行動をすべてカメラで撮影することで、手に取ったけど買わなかった商品、買う予定だったけど途中で棚に戻された商品など、これまで記録が難しかったデータを取得できます。また、店内には新商品、セール商品もたくさんあり、そうした重要な商品をお客さんはちゃんと見てくれているのかどうかも、お店側は知りたいです。

「スーパーワンダーレジ」では商品画像の識別能力が非常に重要ですが、サインポストによると、商品の画像認識率はほぼ100%とのことです。人工知能が商品を識別できないケースに遭遇した場合は、店員にアラートを出して報告する設計になっています。

陳列棚の商品の真ん前に複数のカメラが設置されているため、商品を識別できないケースは少ないようにも見えます。ただ、商品とカメラの距離がすごく近いので、買い物をするお客さんがカメラを気にしたり、商品が取りにくかったり、などはありそうです。

画像による商品管理には電子タグとは違ったメリットがある

商品を管理する方法として長い間注目されて来たのが、電子タグを使った方法です。4月には、経済産業省とセブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズのコンビニ5社は、2025年までに、すべての取扱商品(推計1,000億個)に電子タグを利用することについて、一定の条件の下で各社と合意したと発表しました。

商品に電子タグを取り付けることで、サプライチェーン内に存在する、様々な社会問題を解決する狙いがあります。レジ業務を簡潔にするという分かりやすいものから、食品ロスを減らす、物流効率を高めるなど、生産効率を高めるには解決すべき問題があります。

サインポストの無人レジ「スーパーワンダーレジ」は、画像で商品の管理を行うので、電子タグを使った商品管理とは異なるものです。「スーパーワンダーレジ」は人工知能を活用して、人間と同じように商品を識別することを目標に開発されています。

電子タグはサプライチェーン全体での商品管理を目指しているのに対し、画像による商品管理は、店内のお客さんの買い物を管理することが目的です。電子タグと画像による商品管理は用途が異なるため、小売業は両方のシステムを活用することができます。

電子タグと比較して、画像での商品管理が優れている点は、生鮮食品など、電子タグの貼り付けが難しい商品を管理できることです。また、商品に毎回電子タグを貼り付けなくてもよいので、店員の作業負担の点でも、画像での商品管理の方が簡単です。

「スーパーワンダーレジ」では、最初に専用のハードで商品の写真を撮影して、人工知能に商品の学習をさせます。商品の撮影に掛かる時間は1個あたり数分とのことで、撮影に掛かるコストが大きいのか小さいのか、現時点では判断が難しいところです。

「スーパーワンダーレジ」は小型のディスカウントストアで活躍

サインポストは「スーパーワンダーレジ」の販売を予定していて、早ければ2018年の春にも販売を始める計画です。実証実験はコンビニで行われていますが、大手のコンビニが導入することは考えにくいので、果たしてどんな業種が興味を持つでしょうか。

サインポストの計画では、1,000坪の比較的大きめの店舗で、カメラとシステムを合わせて5,000万円程度で提供することを目指しています。雇用しているアルバイト・パートの人数と人件費にもよりますが、数年で投資費用を回収できる予定です。

「スーパーワンダーレジ」が小売業にもたらす効果は、レジの混雑の解消、レジ業務をなくすことによる人手不足への対応です。この2つの問題を抱えている小売業にとっては、「スーパーワンダーレジ」は重要なソリューションですが、この2つの問題を抱えていない小売業からは、あまり関心を持たれないかもしれません。

また、ある程度テクノロジーに理解のあるお客さんでなければ、無人レジのお店を敬遠する可能性があります。最近は、セミセルフレジを導入する食品スーパーが増えていますが、セミセルフレジを利用しているお客さんは若い世代が多いです。

「スーパーワンダーレジ」を最も必要としている小売業は、都市部で小型のディスカウントストアを運営している企業ではないかと思います。小型のディスカウントストアはお客さんが多いのでレジが混雑していて、取扱商品が多いのでレジ業務の負担も大きく、お客さんはテクノロジーに理解のある若い世代が中心です。

「スーパーワンダーレジ」の導入で店舗運営コストを抑えることができれば、削減したコストを商品の値引きに使うことができます。消費者の節約志向は今後も続くので、小型のディスカウントストアは出店数が増える可能性が高く、「スーパーワンダーレジ」の販売先として有望ではないかと思います。