個店の価値を高めることでチェーンとして成長を目指すヤオコー

個店の価値を高めることでチェーンとして成長を目指すヤオコー

スーパーマーケットのヤオコーは好調な業績が続いており、同業種の中でも高い営業利益を維持しています。「チェーンとしての個店経営」で知られるヤオコーのこれからの成長戦略について、ヤオコー社長のインタビュー記事があります。

今期は「八百幸成城店」と「浦和パルコ店」の2店を新しい商圏に出店しており、従来の郊外以外の出店エリアを開拓しようとしています。ネットスーパーが台頭していますが、ヤオコーの戦略は実店舗の強化で、店内作業の効率化、プライベートブランドの強化などで、ヤオコーにしかない価値を生み出して行く方針です。

新しい商圏を開拓する「八百幸成城店」と「浦和パルコ店」

ヤオコーは11月に東京都調布市に「八百幸成城店」をオープンしていて、このお店はヤオコーが都心から20km圏内へ出店するために開発した、都市型小型店の1号店です。お店のコンセプトは「素材の美味しさを日々実感できるお店」となっていて、高級住宅街である成城のお客さんのニーズを捉えた売り場作りが行われています。

「八百幸成城店」の売上の状況は、お客さんからの認知度も低く、苦戦しているとのことです。「八百幸成城店」では客数が伸びておらず、その要因の一つが駐車場の数が少ないことで、お店の品揃えや価格よりも、駐車場の問題の方が大きいようです。

同じ11月には、埼玉県さいたま市に「浦和パルコ店」もオープンしていて、ヤオコーが駅前のファッションビルに出店するのは初めてです。お店のコンセプトは「お客さまに豊かな食生活を提供するお店」となっていて、高価格帯の食品、イートイン、単身者向けの個食の品揃えなど、駅前立地に対応した売り場作りが行われています。

「浦和パルコ店」は駅前立地、商業施設のパルコの集客力を活かして、当初の想定を越える売上で推移しているとのことです。駅前立地に対応した「お客さまに豊かな食生活を提供するお店」というコンセプトが、お客さんに受け入れられた形です。

「八百幸成城店」と「浦和パルコ店」の新規出店は、ヤオコーにとって新しい商圏を開拓する試みになります。ヤオコーは154店舗のうち86店舗が埼玉県にあり、郊外で店舗数を増やして来ましたが、新しい商圏では新しい店舗フォーマットが必要になります。

少子高齢化による人口の減少、都市部への人口流出が続いてるため、郊外だけで成長を続けることが難しい状況があります。新しい商圏に対応した店舗フォーマットを構築することで、郊外以外の商圏にも出店して、売上を伸ばそうとしています。

物流センターやプロセスセンターを使うことで店内作業の省力化

アルバイト・パートの採用が難しい状況が続いていますが、ヤオコーでも人材の採用が難しいようです。アルバイト・パートが採用できなければ新規出店ができませんし、店舗の人材が不足すると、既存店の売上にも影響が出てきます。

ヤオコーは食品スーパーの中では高収益企業で知られていて、2017年3月期の売上高は343,061百万円、営業利益は14,520百万円です。営業利益率は4.2%と高く、アルバイト・パートには好条件を出せそうですが、それでも採用が難しいということです。

人手不足が続くと店舗で働く従業員の負担が大きくなるので、ヤオコーでは省力化への投資が行われています。店内で行っている作業を、店外の物流センターやプロセスセンターで行うようにすることで、店舗で働く従業員の作業を減らそうとしています。

惣菜はお客さんからのニーズが高まっていますが、どの加工工程を店内でやって、どの加工工程をプロセスセンターでやるのかは重要です。店内作業の効率化と惣菜の品質が天秤に掛けられる状況になるため、上手くバランスを取らなければいけません。

食品スーパーの惣菜売り場を見ていると、各食品スーパーによって惣菜売り場の作り方が異なっているのは興味深いです。まったく人がいない売り場、キッチンでもくもくと従業員が調理している売り場、従業員が調理している姿をよく見えるようにして、お客さんの購買意欲を高めようとしている売り場があります。

どの売り場を採用するかは企業の方針や商圏のニーズにもよるので、どの売り場が正解というのはないと思います。最近のお客さんの惣菜へのニーズは専ら「時短」ですから、惣菜の品質よりも、低価格の方が好まれるのではないでしょうか。

食品スーパーにとってドラッグストアの加工食品や日用品は脅威

ドラッグストアでも生鮮食品を販売しているお店が増えているため、これからは食品スーパーと競合する部分も出てきます。ただ、食品スーパーが生鮮食品でドラッグストアに負けることがあってはいけないので、生鮮食品のカテゴリに関しては、基本的には食品スーパーの競合だとは認識されていないようです。

生鮮食品を販売するためには、数量を確保するための調達能力が要りますし、商品を適切に管理する店員も必要になります。ドラッグストアも本腰を入れて生鮮食品の強化に取り組むと思いますが、品質や価格で、どれだけ食品スーパーに近付けるかは未知数です。

生鮮食品以外の加工食品、日用品のカテゴリでは、ドラッグストアが食品スーパーに与える影響が大きくなると考えられています。お客さんにドラッグストアと比較されるようになるため、品揃えや価格で負けないように、対応して行くことになります。

ドラッグストアの加工食品や日用品は価格競争力があるので、商品単品の価格で比較すると食品スーパーは分が悪いです。プライベートブランドの数も増えていますが、今後、コンビニのように品質を高める方向へと進んで行くのかもしれません。

食品スーパーの立場として困るのは、生鮮食品とそれ以外の食品で、お客さんにドラッグストアと使い分けて買い物をされることです。食品スーパーから生鮮食品以外の食品の売上が流出することになるので、食品スーパーの売上減少に繋がります。

ドラッグストアはドミナント出店を進めていますから、お客さんにとってますます身近にある、すぐに行けるお店になっています。「ドラッグストアは近い、食品スーパーは遠い」と言われるようになることも、食品スーパーには都合が悪いです。

ネットスーパーへの対抗策はプライベートブランドの強化

ヤオコーはネットスーパーにはそれほど力を入れておらず、ネットスーパーを行っているのも2店舗しかなく、競合他社と比較して少ないです。ネットスーパーに対するお客さんのニーズは確認できていますが、採算面の問題もあって、拡大のスピードは遅いです。

アルバイト・パートの採用が難しい中で、採算が取れないネットスーパーに、貴重な人材を使いたくないというのはあると思います。ヤオコーは営業利益率が高く、実店舗で高収益を実現していることもあり、ネットスーパーよりも実店舗へ投資しようとするのは順当ではないでしょうか。

ヤオコーの売上構成は、ヤングファミリーと呼んでいる49歳以下が3分の1、ミドル50歳から65歳が3分の1、シニア65歳以上で3分の1となっているとのことです。50歳以上のお客さんは食品スーパーで材料を買って、自分で調理をする生活を送って来ている人が多いので、こうしたお客さんは、今後もしばらくは実店舗への来店が見込めます。

10年後、20年後を考えると、お客さんも高齢化するので、材料から惣菜へ、実店舗から宅配へという変化はあると思います。ヤオコーにもこうしたお客さんの変化に対応しなければならない状況が来ますが、今すぐに将来を見越してネットスーパーを増やすようなことはなく、実店舗の価値を高めて行く方針です。

今年の4月21日からAmazonはAmazonプライムの会員向けに、東京の一部地域で「Amazonフレッシュ」のサービスを開始しています。セブン&アイホールディングスがアスクルと提携した「IY FRESH」のサービスも11月下旬からスタートしていて、お客さんが利用できるネットスーパーの数が増えています。

ヤオコーはネットスーパーへの対抗策として、ヤオコーでしか買えない、プライベートブランドの開発に力を入れる計画です。「Amazonフレッシュ」や「IY FRESH」をお客さんがどう評価しているのかも、今のところ分かりませんので、ネットスーパーが実店舗へ与える影響を本格的に考えるのもまだ後になりそうです。