山梨の食品スーパー「やまと」が競争の激化により破産申請

山梨の食品スーパー「やまと」が競争の激化により破産申請

山梨県で食品スーパーを展開している「やまと」が破産申請を行い、店舗の閉鎖と従業員の解雇を行うとのニュースがあります。インターネットのニュース配信数、ソーシャルメディアの意見も多く、全国的に注目度の高いニュースになっています。

地元の食品スーパーにとっては、従来の大手スーパーだけではなく、コンビニやドラッグストアも競合になっています。「やまと」の閉店には地方の人口減少も関係していると考えられ、地元の食品スーパーの閉店は今後、全国で起こるのではないでしょうか。

借入金の負担が重いことと販売競争の激化が破産申請の要因

破産申請を行った「やまと」は、韮崎市および北杜市を中心に甲府市、笛吹市、市川三郷町などで食品スーパー「スーパーやまと」を運営して来ました。負債総額は平成29年6月期決算で16億6,900万円、約180人の社員・パートは6日付で全員解雇され、再就職の支援が行われる事になっています。

破産申請に至った要因として、設備投資等による借入金の負担が重かったこと、同業他社との競争が激化したことが挙げられています。信用不安が取引先に広がり納入が減り、商品を十分に確保する事が難しくなっていることが、店舗の閉鎖を決めた理由です。

売上高と店舗数のデータの推移を見ると、売上のピークは2000年6月期で、当時の売上高は約78億9,200万円です。その後の売上高は、約64億4,300万円(2008年6月期)、47億9,200万円(2014年6月期)、約27億4700万円(2017年6月期)となっています。

2008年と2000年を比較すると、売上の減少は小さいものの、それ以降の売上の減少が激しいです。2014年から2017年に掛けては、3年間で売上高が20億円も減少していますが、店舗の閉店が続くと売上高を一気に失ってしまう恐怖があります。

今回の「やまと」の破産申請は、地元のニュースサイトだけではなく、全国のニュースサイトでもたくさん配信されています。高齢化社会が進んでおり、買い物難民の存在が社会問題になる中で、地元のスーパーの閉店のニュースは注目度が高いです。

ソーシャルメディアには、子供の頃や学生の頃に、「やまと」のお店で買物をした人たちが残念がっている声が多いです。小売業の店舗には多くのお客さん、従業員、納入業者の思い出が詰まっていて、店舗の閉店のニュースを見るのは心苦しいです。

地元の食品スーパーは節約志向や惣菜需要への対応が難しい

地元の中小小売業と県外の大規模小売業の競争は昔からありますが、近年は競争力の差が大きくなっていると思います。特に差を感じるのは商品力で、商品の質、商品の価格、商品の品揃えで、大規模小売業の進歩に中小小売業が付いて行くことは難しいです。

お客さんのライフスタイルは多様化しているため、食品スーパーに求められている商品も多様化しています。「やまと」は創業105年と、歴史の長い企業であったため、お客さんのニーズの多様化に対応する事が難しかったというのはあるかもしれません。

小売業を取り巻く環境でよく言われているのは、消費者の節約志向が強いため、商品の値下げが必要だという意見です。イオン、セブン&アイホールディングス、西友など、大手のスーパーでは、食品、日用品で継続的に値下げが行われています。

節約志向の強いお客さんは、近くにある地元の食品スーパーではなく、時間を掛けて遠方の大手スーパーに行くこともあります。大手スーパーは低価格のプライベートブランドを開発しているため、まとめ買いをすると大きな節約になります。

現在、共働き世帯が増えたこと、高齢者の単身世帯が増えたことで、食品スーパーには惣菜のニーズがあります。お客さんの惣菜を購入する頻度が高くなると、お客さんの飽きも早くなるので、食品スーパーには新商品の開発が不可欠になります。

大手スーパーはお客さんからの惣菜の需要を取り込むべく、売り場面積を拡大したり、売り場をリニューアルするなど投資を行っています。一方、地元のスーパーは積極的な投資が難しく、お客さんも大手スーパーの惣菜売り場との差を感じているはずです。

食品スーパーの売上を奪っているコンビニとドラッグストア

地元の食品スーパーの競合として、コンビニとドラッグストアの存在も大きく、ここ最近は特に影響力を増しています。コンビニもドラッグストアも、食品スーパーよりも店舗が小さいため出店がしやすく、毎年店舗数を大きく増やしています。

お客さんが食品を買うにあたって意識するのは、商品の価値(価格と品質)、買い物に掛かるコストの2つだと考えています。コンビニとドラッグストアは、商品の価値(価格と品質)、買い物に掛かるコストにおいて、食品スーパーにはない強みがあります。

以前は食品スーパーで買い物をしていたお客さんが、コンビニやドラッグストアで買い物をするようになっている変化があります。高齢者のお客さんは食べる量も少なくなるため、遠方の食品スーパーよりも、近くのコンビニを好む人も出てきます。

ドラッグストアには、食品スーパーにある生鮮食品や惣菜はありませんが、ナショナルブランドの加工食品は安いです。加工食品と日用品がセットで買えるため、生鮮食品を買わない日は、ドラッグストアだけで買い物が簡単に済んでしまいます。

毎日生活をしていても感じますが、ドラッグストアは着実に店舗数を増やしていて、商圏での地位を強めています。ドラッグストアは特定エリアへのドミナントを強化している企業が多く、本社のある県、および周辺の県で店舗を増やしています。

ドラッグストアの店舗数が増え、立ち寄る機会が増えて来ると、加工食品や日用品をドラッグストアで買う人が増えます。食品スーパーでは、生鮮食品と惣菜だけを買う人が多くなり、食品スーパーの客単価と売上は下がってしまいます。

日本全国で起こる地元の食品スーパーの閉店と買い物難民の増加

地元の食品スーパーの「やまと」のお店がなくなることで、買い物をする場所がなくなる、買い物難民の増加が心配されます。「やまと」の閉店のニュースがインターネット上で話題になっているのも、買い物難民を心配する人が多いからではないかと思います。

日本全国のほとんどの地方では人口の減少、人口の流出が起こっており、小売業を取り巻く環境は厳しくなるばかりです。今後も地方では、地元の食品スーパーの閉店が起こることは確実ですから、日本全国で買い物難民の問題が発生します。

高齢者のお客さんにとって大変なことは、物理的にお店が遠くなることと、体力の低下がセットになることです。体力的に買い物に出掛けることが難しくなる中で、買い物をするお店まで遠くなってしまうと、体力的にも精神的にも苦しくなります。

昔からある地元の食品スーパーやディスカウントストアには、徒歩や自転車で買い物に来ている高齢者のお客さんも多いです。徒歩や自転車で買い物をしている高齢者のお客さんは、最寄りのお店がなくなってしまうと、遠方のお店に出掛けることも難しいです。

買い物難民対策として期待されているのが移動スーパーで、移動スーパーを始めるというニュースをよく目にします。移動スーパーの手間賃として、商品1個あたり数十円の手数料をもらう仕組みが多いですが、お客さんにも受け入れているとのことです。

お客さんに次回購入したい商品を聞いて、週に2回くらいお客さんを訪問できれば、食品ロスも防ぐことができます。移動スーパーの分野では、需要予測、ドローン、自動運転など、最新のテクノロジーを活用することで、生産性を高めることも期待されています。