ビックカメラが新業態の「ビックカメラセレクト原宿店」を出店

ビックカメラが新業態の「ビックカメラセレクト原宿店」を出店

ビックカメラが若い女性、外国人観光客をターゲットにした、新業態の「ビックカメラセレクト原宿店」をオープンしています。「ビックカメラセレクト」は地域に合った品揃えが特徴で、「ビックカメラセレクト原宿店」は原宿に買い物に来るお客さんを意識した品揃えになっています。

家電量販店では価格競争が激しいことに加え、オンライン小売業の影響も受けており、店舗を増やすことが難しくなっています。従来の「大型店+家電」の組み合わせだけで成長を続けることは難しく、「小型店+非家電」の新しい店舗フォーマットで売上を拡大する狙いがあります。

商圏のニーズに合った商品を販売する「ビックカメラセレクト」

「ビックカメラセレクト原宿店」は従来のビックカメラとは異なり、家電以外の商品の品揃えを中心にしていることが特徴です。商品の構成比は家電が30%、非家電が70%となっていて、化粧品、日用品、医薬品などの売上が期待されています。

ビックカメラは駅前に大型店舗を出店していることが多く、大きな売り場面積と豊富な品揃えで、お客さんの細かいニーズを意識するような小売業ではありません。新業態である「ビックカメラセレクト」は商圏のお客さんのニーズを踏まえ、地域のお客さんが必要とする商品をセレクトして販売するやり方です。

若い女性、美容に関心が高い外国人女性観光客を狙って、美容家電や化粧品を体験できるカウンターが設置されています。百貨店やドラッグストアは美容家電を扱っていないところもあるので、美容家電と化粧品が同時に体験できる点は強みになりそうです。

たくさんの商品を陳列できる大型店とは異なり、小型店では品揃えが制限されることになります。そうした中でも美容家電と化粧品を試してもらうことに力を入れており、この2つのカテゴリが「ビックカメラセレクト原宿店」にとって重要だと分かります。

家電量販店が取り扱う商品はメーカーの規格品が多いため、「アマゾン・エフェクト」と呼ばれるオンライン小売業の影響を強く受けています。家電量販店は家電以外の売上を作るろうとしており、非家電商品が多い「ビックカメラセレクト」もこうした動きの一つだと言えます。

主要都市の駅前には大型家電量販店が出店しているため、大型店を増やし続けることが難しいという背景もあります。出店しやすい小型の店舗フォーマットを作って、地域に合った品揃えにすることで、新規出店を増やして行こうとしています。

「ビックカメラセレクト原宿店」の顧客は若い女性と外国人観光客

原宿は高校生を含めた若い女性が多く集まっている地域ですが、「ビックカメラセレクト原宿店」は女性のお客さんをターゲットにしています。家電量販店は男性が好んで買い物をするお店であるため、女性を意識した店作りは新しい試みです。

化粧品は昔は百貨店で買うイメージでしたが、今ではドラッグストアやディスカウントストアで買うお客さんも増えています。家電量販店で化粧品を買ってもおかしいことはなく、取扱い商品が多いビックカメラは化粧品とセットで様々な提案ができます。

原宿は女性のお客さんが多いことに加えて、最近は外国人観光客にも人気の観光スポットになっています。Twitter、Instagram、Youtubeなどのソーシャルメディアで「harajuku」「takeshita street」を検索すると、外国人観光客の若い女性やカップルの投稿がたくさん出てきます。

外国人観光客に対して何を販売するかという点ですが、基本的には日本の女性と同じニーズを持っていると考えて良いと思います。ソーシャルメディアの投稿を見ていると、ファッション、化粧品、クレープ、100円ショップなどが目立ちます。

外国人観光客が好んでいるカテゴリとして、雑貨、土産品、お酒、文房具、おもちゃなどが挙げられています。紙おむつ、医薬品、魔法瓶、美容家電は中国人観光客に特に好まれている商品ですが、こうした商品も品揃えされています。

ビックカメラにとって良い点は、外国人観光客に対してワンストップで幅広いカテゴリの商品を提案できることです。ソーシャルメディアには原宿でのアクティビティが投稿されるので、それらを参考にしながら商品を入れ替えることもできます。

顧客とのタッチポイントになる「ビックカメラセレクト原宿店」

「ビックカメラセレクト原宿店」の売り場面積は約330平方メートルで、コンビニエンスストと同等か少し大きいくらいです。大型店で大きな売上を作る従来の出店戦略と比較すると、観光客の多い立地ではあるものの、売上へのインパクトは小さそうです。

一方で、「ビックカメラセレクト原宿店」はお客さんとの新しいタッチポイントになり、これまで接触が難しかったお客さんと接触することができます。中学生や高校生、家族と同居している若い女性が家電量販店に出かけることはあまりないですが、若い女性が多い原宿にお店を持つことで接点が生まれます。

ネットショップで買い物をすることが当たり前な時代には、お客さんは一生のお客さんになります。実店舗で買い物をしなかったとしても、お店のことを知ってもらえれば、将来的にネットショップのお客さんになってもらうことが期待できます。

原宿には日本国内の地方から観光にやって来ますし、外国人観光客もたくさん来ています。近所にビックカメラのお店がない日本人のお客さん、日本に頻繁にやって来ることが難しい外国人のお客さんにも、ネットショップで商品を売ることができます。

ビックカメラの2017年8月期の決算データによると、グループ全体のEC売上高は前年同期比5.3%増の729億円となっています。お客さんは家電をネットショップで買うことに慣れてきており、ビックカメラのEC化は前年同期比0.3%増の9.2%と高いです。

ビックカメラは家電に加えて非家電の品揃えも豊富にあるため、ネットショップとの相性は良いです。「ビックカメラセレクト原宿店」のお客さんがネットショップを利用してくれるようになれば、EC化率もさらに高まります。

外国人観光客とオムニチャネルの組み合わせで出店地域が拡大

「ビックカメラセレクト原宿店」はビックカメラの新業態ですが、店舗規模、立地の両面でこれまでにはない新しいものです。お店を作ってお客さんを集客するというよりも、既に集客力がある地域にお店を出す小売業が増えて来るのではないかと思います。

高齢者のお客さんは金銭的には余裕があるものの、必要な商品は少なく、継続的な消費が見込めません。長期に渡ってお客さんになってもらえる可能性の高い若者、客単価の高い外国人観光客と接触できるタッチポイントを持とうとするのは順当です。

実店舗とネットショップが融合したオムニチャネルの重要性が語られますが、主たる目的はお客さんの買い物買い物体験を改良させるためです。便利な買い物体験を提供するAmazonや楽天などのオンライン小売業に対抗するためには、従来の小売業もネットショップを持たなければならないというものです。

オムニチャネルにはお客さんの買い物体験を改良するだけではなく、小売業が実店舗を持つことに対するリスクヘッジの効果もあります。実店舗をお客さんとのタッチポイント、ネットショップを買い物をする売り場と見ることもでき、実店舗の役割は単なる売り場だけではなくなっています。

新業態である「ビックカメラセレクト原宿店」がうまく行けば、今後は日本全国の観光地に「ビックカメラセレクト」が出店するかもしれません。例えば、九州には韓国・中国からの観光客がたくさん来ていますが、ビックカメラの店舗は天神1号店、天神2号店、鹿児島中央駅店の3店舗しかありません。

ビックカメラは家電量販店売上高ランキング第2位ではあるものの、九州のお客さんとはあまり接点がないことになります。地方のお客さんと外国人観光客をセットにして取り込み、さらにネットショップへ誘導できれば、出店できる範囲が広がります。