家電量販店から住まいのサービスへ進出するヤマダ電機の戦略

家電量販店から住まいのサービスへ進出するヤマダ電機の戦略

ヤマダ電機の社長のインタビュー記事の中で、住宅関連サービスの展望について説明されています。家電量販店はAmazonなどのネットショップの影響を大きく受けていますが、ヤマダ電機は住宅関連ビジネスで新しい売上を作ろうとしています。

ヤマダ電機のコンセプトは「住まいに関する家1軒まるごとのサービス」というもので、従来の家電の販売から家具、インテリア、リフォーム、住宅と拡大する狙いです。小売業が特定のカテゴリに特化して生き残って行くことは難しく、新しいカテゴリの拡大、新しいサービスの提供に取り組む企業が増えて来そうです。

Amazonの脅威は大きいものの大型家電が好調で営業利益を確保

Amazon、楽天などのネットショップの存在が小売業に影響を与え始めていて、多くの業界がネットショップを意識するようになっています。家電量販店は特にネットショップの影響が強く、数年前から家電量販店の売上は減少傾向にあります。

家電量販店はこのまま苦しい状況が続くと予想されていたのですが、ここ最近はネットショップの影響が少し落ち着いているような印象があります。実店舗からネットショップへとお客さんが移動していますが、依然として実店舗を好むお客さんも多く、家電量販店も一息付いている状態です。

大手家電量販店各社の決算情報を見ていると、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの大型の家電がよく売れています。こうした商品はメーカーが新機能を開発したり、品質を改良するため、お客さんに高付加価値商品として認識されているようです。

Amazonでも大型の家電が販売されているのですが、大型家電の買い物場所を実店舗からネットショップに変えることはハードルが高いです。大型家電の売上をネットショップに取られなければ、しばらくは堅調な売上が続くのではないかと思います。

ヤマダ電機のここ3年の売上高を見ると、1,664,370百万円、1,612,735百万円(3.1%減)、1,563,056百万円(3.1%減)と減少傾向です。一方、営業利益は19,918百万円、58,158百万円(192.0%増)、57,895百万円(0.5%減)と大きく持ち直していて、営業利益率が改善しています。

ヤマダ電機は店舗の統廃合と人員の配置転換を行っており、その結果、売上高は減少しているものの、営業利益は増えています。売上高については大きな伸びは期待できないものの、構造改革を行うことにより、営業利益率を改善する余地はありそうです。

既存の家電ビジネスとの相性が良い住宅関連ビジネスへ新規投資

ヤマダ電機は近年、住宅関連ビジネスへの投資を行っていて、住宅関連のサービスを提供するグループ会社が増えています。時系列では、2011年に注文住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダ・エスバイエルホーム)の買収、13年にはスマートハウスを低価格で提供するメーカーのヤマダ・ウッドハウスを設立、2017年に賃貸物件や不動産売買の仲介を行うヤマダ不動産の設立となっています。

住宅の販売で大きな成果が出ているようなニュースはないのですが、住宅メーカー、住宅ローン会社、住宅販売会社と揃っているため、住宅の販売をグループ内で完結できます。家を建てるというのはお客さんにとっても大変な作業ですが、一つのグループとやり取りをするのであれば、お客さんの負担も軽減されます。

ヤマダ電機の構造改革の狙いは、従来の家電量販店のビジネスと、新規の住宅関連ビジネスを融合することにあります。ネットショップの影響で家電量販店の売上高は減少傾向にあるものの、たくさんのお客さんが家電量販店に訪れています。

実店舗が持つ集客力、既存顧客を住宅関連ビジネスに繋げることで、新しい売上を作り出すチャンスがあります。実店舗はネットショップからの影響は避けられないのですが、まだまだお客さんは実店舗にやって来てくれるため、新しい商品やサービスを提供したいところです。

「ヤマダ不動産」で検索すると1ページ目の3件目に出てくるので、SEO(検索エンジン最適化)はこれからといった感じです。不動産専門サイトと比較すると物件数も少なく、使い勝手も良くないため、果たしてお客さんは使ってくれるのかどうかは分かりません。

物件によっては成約時に最大で15,000ポイントのヤマダポイントをもらえるものがあり、ヤマダ電機の新規顧客獲得に繋がる可能性もあります。15,000ポイントはインセンティブとしては少ないかなという気もしますが、将来的にもらえるポイントが多くなれば、不動産仲介会社としての魅力も大きくなります。

家具・ホームファッション・インテリア・カフェのある新業態

ヤマダ電機は2017年6月に「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」をオープンしていて、住宅関連ビジネスを強化する新しい業態として注目されています。従来のリフォームに加え、ホームファッションや家具、インテリア雑貨、カフェやキッズスペースなど、新しい要素がたくさんあります。

カフェやキッズスペースを増やしている小売業が増えていますが、これは新規顧客として女性を取り込もうとする狙いがあります。女性の社会進出により女性の経済力が高まっていますから、女性のお財布を狙うというのは、小売業だけではなくすべてのビジネスにおいて共通の戦略になっています。

インテリアリフォームYAMADA 前橋店から200M圏内に、テックランド New 前橋本店とヤマダ・ウッドハウスのモデルハウスがあるとのことです。歩いて行ける範囲内で、家電、ホームファッションや家具、インテリア、リフォーム、住宅をまとめて見ることができるので、ファミリーのお客さんは買い物がしやすいです。

休日に買い物に出かけて、何も買わないと徒労感を感じるものですが、低単価の雑貨を買ったり、カフェでくつろいだり、来店ポイントをもらえるなどの小さな満足感があれば、お客さんに長時間滞在してもらえます。住宅を販売するためには長い時間が掛かりますから、お客さんが来店しやすい環境を整えるという点で良さそうです。

小売業では取り扱い商品の垣根がなくなりつつあり、ヤマダ電機がホームファッションや家具、インテリアを扱うようになれば、他の小売業と類似して来ます。ニトリと無印良品はコンセプトが似て来ているのですが、将来的にはヤマダ電機も同様のコンセプトへ向かって行くのかもしれません。

商品の価値(品質+価格)の点では、ニトリと無印良品はオリジナル商品の企画・開発の歴史が長いですが、ヤマダ電機の商品が競争できるのかどうかです。ホームセンターや総合スーパーの住関連商品の売上が、ニトリと無印良品に流れているようにも感じるので、お客さんを獲得できるかは商品の価値に掛かっています。

5,000万人のビッグデータを活用した顧客の獲得と囲い込み

ヤマダ電機の強みはお客さんと深く関われる点で、お客さん宅に訪問することで、家族の状況、家具や家電の状況、所得状況、職業など、多くの個人情報を取得することができます。既存顧客のデータは5,000万人分あり、これらのビッグデータを活用することで、新規顧客の獲得と既存顧客の囲い込みを狙っています。

ネットショップの脅威が強まる中で、実際にお客さんと接触できる、会話ができる、個人情報が取得できるというのは実店舗の大きな強みです。ネットショップも実店舗を持つことでお客さんとの接点を増やそうとする動きがありますが、実店舗はネットショップがまだ持っていない、独自の強みを活かしたいところです。

家電量販店で買い物をしてくれたお客さんの中から、住宅やリフォームを購入する可能性の高い潜在顧客を探すのは良さそうです。家電に大きなお金を使うお客さんは生活環境に関心の強いお客さんですから、家電にお金を掛けないお客さんに比べて、住宅やリフォームを購入する潜在顧客として価値があります。

高齢者がいる世帯はリフォームの潜在顧客として有望で、生活環境を改良するための小さなリフォームのニーズがあります。こうしたお客さんの家族の情報を家電の配達や工事の時に把握しておけば、競合企業に行かれる前にヤマダ電機のリフォームを提案することができます。

ヤマダ電機で住宅やリフォームを購入することが、既存のグループ全体のブランドイメージを高める効果もあると思います。住宅やリフォームはお客さんにとって難しい買い物ですから、従業員の専門知識や接客態度、商品に満足した時の満足度は大きいです。

住宅やリフォームでヤマダ電機グループに好感を持ってもらえれば、家電を優先的にヤマダ電機で買おうとするお客さんも出てきます。家電量販店から住宅ビジネスへの集客が期待されますが、住宅ビジネスから家電量販店への集客、囲い込みもあります。