小売業はテクノロジーの活用で収益性を改善することができる

小売業はテクノロジーの活用で収益性を改善することができる

ローソン、イオン、ファーストリテイリングなどの小売業で、業務効率化を目的にAIの導入が進んでいるとの記事があります。ローソンではセミオート発注で発注時間の短縮、イオンではAIを使った問い合わせで業務の効率化と人件費の削減、ユニクロでは過去の購買履歴を使った商品の提案で売上アップと、AIは様々なケースで活用されています。

各種テクノロジーはベンダー企業が開発するので効果が期待できますが、実際に店舗できちんと運用できるか、小売業側の人材の育成が課題になりそうです。テクノロジーの導入によって店舗業務が効率がされれば、店員にとっては働きやすく、お客さんにとっては買い物がしやすいお店になることができます。

ローソンはセミオートシステムの導入で発注に掛かる時間を短縮

ローソンがセミオートシステムを全店に導入したのは平成27年で、弁当などの約400点品が対象になっているとのことです。セミオートシステムの導入によるメリットは発注時間の短縮で、従来1時間掛かっていたものが20-30分に短縮されています。

コンビニにとって発注は最優先業務で、昔は店長が毎日1日中パソコンに向かって発注数量を決めていたという話を聞いたことがあります。現在は人手不足ということもありますが、テクノロジーの進歩によって、コンビニの発注業務も様変わりしています。

商圏が狭く、リピーターのお客さんが多いコンビニの特徴を考慮すると、セミオートシステムとの相性は悪くはなさそうです。過去の天候、販売実績をもとに発注数量を決める仕組みになっていますが、大きく外れるようなこともないのではないでしょうか。

セミオートシステムである程度の在庫数量を決めたうえで、担当者の裁量で売りたい商品をプッシュするような、テクノロジーと店員の経験を組み合わせたやり方は良さそうです。「この商品を売りたい」と意識して数量を増やした商品は良く売れますから、すべてをセミオートにしてしまうと、大きく売上を伸ばす機会が失われてしまいます。

テクノロジーを活用して発注業務を自動化することは、コンビニだけではなく多くの小売業で取り組まれています。小売業では発注が重要だと考えられて来たため、どの業種でも人件費が掛かっていますが、これを自動化できれば担当者に余力が生まれます。

商品の在庫を管理するよりも、どの商品を外すのか、外したところにどんな商品を入れるのかという、売り場の管理に力を入れたいところです。最近は各店舗の担当者に売り場の商品入れ替えの権限を与える小売業も増えているため、店員のスキルとしては、在庫管理よりも商品の目利き力の方が重要になっています。

ユニクロはAIを活用してお客さんのスマートフォンに商品の提案

ユニクロを運営するファーストリテイリングでは、AIを使ってお客さんに商品を提案する仕組みが考案されています。店舗に来店した際にお客さんのスマートフォンに表示するとのことで、お店のセールや在庫状況とも連動した提案も可能です。

過購買履歴を利用した商品の提案ですから、ネットショップのAmazonなどで導入されているレコメンドと同等なものだと言えます。実店舗ではこうしたレコメンドが難しかったのですが、ポイントカード、クレジットカード、ネットショップ、ショッピングアプリなどを活用して、実店舗とオンラインで購買履歴を統合しようとする動きがあります。

ユニクロが販売している商品はファッションではあるものの、Tシャツ、カッターシャツ、下着、靴下など、繰り返し購入する生活必需品的な要素もあります。こうした繰り返し購入する商品については、過去の購買履歴を活用した商品提案がうまく機能して、売上を伸ばすことができるのではないかと思います。

「あなたが過去に購入したカッターシャツと似ていて、さらに品質を改良した新製品があります、価格は○○円で以前に購入した商品よりも少し高くなっていて、陳列棚はどこどこです」というような提案がスマートフォンに表示されると、買ってみようかとなるお客さんもいます。お客さんが過去に繰り返し購入しているカテゴリの商品をきっちり買ってもらうという提案のやり方が、ユニクロの商品ではうまく機能しそうです。

小売業各社はスマートフォンのショッピングアプリを開発していて、実店舗でもアプリを使って買い物をしてもらいたいと考えています。実店舗で気になった商品のバーコードを読み込んで商品情報を見たり、お気に入りに登録して、ネットショップで購入してもらうというようなやり方です。

ここで問題になりそうなのが、店内でスマートフォンを使いながら買い物をすると時間が掛かってしまいますし、お客さんが疲れてしまう可能性もあります。店内でスマートフォンを使ってもらい、滞在時間を伸ばそうとすると、休憩場所の設置、カフェなどの併設などの対策が必要になるかもしれません。

イオンは社内問い合わせへの回答にAIを導入して業務の効率化

イオンは日本IBMのAI「ワトソン」を導入したスマートフォンを従業員に持たせることで、社内問い合わせ業務の効率アップを図るとのことです。従業員はスマートフォンに音声やテキストで店舗での業務に関する質問すると、スマートフォンのAIが問い合わせの内容に自動で回答する仕組みです。

社内向けのコールセンターへの問い合わせを減らすことで、人件費の削減するとともに、接客を担当する人材を増やす狙いがあります。短期的にはコールセンターへの問い合わせの2割をAIで対応、長期的にはAIでの対応を4割程度まで増やす予定になっています。

労働力人口の減少で採用が難しくなり、人件費が上昇していることもあって、小売業では人材の採用や配置で変化が見られます。多くの小売業で言われているのは店頭で接客をする人材を増やすことの重要性で、新規採用や配置転換で売り場で働く人材を増やそうとする動きがあります。

お客さんの満足度アップや売上アップに繋がらない業務には、積極的にテクノロジーが導入され、効率化、無人化が行われます。人材の採用や管理業務もAIとの相性が良いとされていて、管理業務にはテクノロジーを活用して効率化を図れる場所がありそうです。

問い合わせ業務にAIが導入される事例が増えていて、ネットショップのLOHACOでは、お客さんからの問い合わせにAIが回答しています。サポートページのチャット欄に「配送料」「不在の場合」「商品の返品」「商品の破損」などのキーワードを入力すると、そのキーワードに関連する回答が自動で表示されます。

AIは質問された内容を学習して回答の精度を高めて行くため、時間経過とともに利用者の満足度も高まる効果が期待できます。様々なケースでAIへ問い合わせることが当たり前になれば、個別の企業だけでなく、日本全体で問い合わせ業務の効率化が図れます。

テクノロジーの活用で店舗業務の効率化と収益性の改善が可能

テクノロジーの導入は小売業だけで行われるわけではありませんが、小売業ではどうやって運用して行くかが課題になります。店舗で働く人材はアルバイトやパートが主体ですから、正社員ほど積極的に新しいテクノロジーを勉強してくれるわけではありません。

テクノロジーを使いこなし、学習意欲のある若い人材を確保したいところですが、実際には人材不足でシニアをどうやって確保するかという話になっています。最近のシニアはスマートフォンを利用する方が増えていますが、アルバイトやパートの年齢が高いお店では、テクノロジーの運用が簡単ではないかもしれません。

業種によってパート・アルバイトの年齢は様々ですが、例えば、ユニクロなどのファッション企業では若い人が多いです。新しい店舗の多いドラッグストアでは主婦のパートが多く、古い店舗が多い総合スーパー、ホームセンター、家電量販店では男女とも年齢層が高くなっている印象です。

テクノロジーの活用という点では、うまく運用できる企業とそうでない企業で差が出るのではないかと予想しています。ただ、買い物をしてもらうお客さんも高齢化しているため、お客さんの方が積極的にテクノロジーを活用してくれないというケースもあります。

新しいテクノロジーを小売業がうまく使いこなすには時間が掛かりそうですが、長期的には業務の効率化によって、小売業の収益性は良くなるのではないかと考えています。AIを使った問い合わせ回答はすでにうまく行っている実績がありますし、セルフレジやセミセルフレジでレジ業務の時間が短縮したとの事例もあります。

小売業の店内での業務には在庫管理など、効率が悪いところがたくさんあり、テクノロジーを活用することで改善できるものがあります。テクノロジーの活用により、お店がお客さんにとって買い物がしやすいお店になれば、コスト削減だけでなく売上アップも期待できます。