ニトリが倉庫の生産性と労働環境を改善するロボットを導入

ニトリが倉庫の生産性と労働環境を改善するロボットを導入

ニトリが倉庫のコスト削減と労働環境改善のため、ノルウェーの企業が開発した倉庫ロボット「オートストア」を導入しています。倉庫のスペースを効率よく使える、人間の作業負担が減る、生産性が上がるなど、大きな効果が見込まれています。

高齢化社会が進めば倉庫で働く従業員の体力も落ちますから、高齢化社会に対応できる働きやすい環境が必要になります。同じ作業を繰り返す業務が多い小売業では、ロボットが活躍できる領域が多く、バックヤードだけではなく店頭でも多くのロボットが導入されそうです。

お客さんの買い物範囲が狭くなり自宅に商品を配達するようになる

ニトリは郊外店舗で成功を収めている企業ですが、近年、都市部にニトリデコホームという名前の小型店を増やしています。車を持たない若者、車の運転をやめる高齢者が増えていて、こうしたお客さんと接触するには、車がなくても行ける場所にお店が必要です。

お客さんはニトリデコホームに交通機関で買い物に来ますから、たくさんの商品を買って持って帰ることができません。お客さんが買った商品を自宅に配達することが増えるので、ニトリデコホームの店舗数が増えれば、配達件数も増えることになります。

ニトリはネットショップを運営しているので、お客さんは実店舗とネットショップの両方で買い物をすることができます。例えば、実店舗に買い物に行って商品をいろいろ見て、その場で買い物をすることはなく、商品情報をメモして家に帰ったとします。

その後、商品が欲しいと思った場合、昔ならもう1回実店舗に出かけるのですが、今はネットショップでも注文することができます。実店舗に再来店していたお客さんがネットショップで注文をすれば、その分だけニトリの配達件数が増えることになります。

都市部への出店、ネットショップの活用は小売業全体のトレンドで、その結果発生する配達件数の増加はニトリだけの課題ではありません。小売業では、売り場面積の大きなお店を郊外に作って、そこに商品を大量に並べて、お客さんが自動車で遠くから買い物に来るというのが当たり前だと考えられて来ました。

しかし、自動車を持たない人、運転に不安のある高齢者が増えて、遠くのお店まで買い物に行くことが難しくなれば、従来の商品流通の仕組みも機能しなくなります。お客さんがお店から自分で商品を持って帰ることが減り、お店がお客さんの自宅に荷物を届けることが増えるようになります。

ロボット倉庫システム「オートストア」の効率の良い在庫管理方法

倉庫では人間が台車やかごを使いながら商品のピッキングを行いますから、人間が歩くための通路が広めに取ってあります。ロボットがピッキングを行うオートストアではこうした通路が不要になるため、同じ倉庫面積で多くの商品が管理できるようになります。

人間がピッキングする場合は棚の高さも人間の手が届く高さになりますが、オートストアでは天井まで高く商品を積み上げています。ロボットと聞くとコスト削減をイメージしますが、倉庫内のスペースを圧縮して、管理できる商品を増やすメリットは大きいです。

いくつか自動倉庫を紹介する動画を見たことがあるのですが、自動倉庫では人間が立っている場所に荷物が入った棚やゴンドラがやって来ます。オートストアでも同じ仕組みになっていて、人間が商品を取りに行く必要がないので体力を使いません。

目の前に来た商品に集中できるので、間違った商品を扱ったり、商品を落として破損させるなどのミスがなくなります。ニトリは取り扱い作業が難しい大型の家具を販売していますが、将来的に大きくて重い商品も自動倉庫で管理できるようになれば画期的です。

オートストアではゴンドラを縦に積み上げて、最上段から下の方にあるゴンドラを釣り上げて搬送する設計になっています。上にあるゴンドラほど短時間で釣り上げることができ、下にあるゴンドラほど釣り上げるのに時間が掛かることになります。

オートストアは過去の出荷件数を分析して、ゴンドラの移動時間を短くするため、よく出る商品のゴンドラを上の方に自動で配置するとのことです。人気商品はトレンドや季節によってその時その時で変化しますが、それらを考慮してゴンドラを再配置する仕組みは優秀です。

高齢化社会に対応した体力的に負担の小さい労働環境が求められる

私は店舗の倉庫、物流倉庫で働いたことがありますが、倉庫の業務は決められたルールが守られずに生産性が低いことが多いです。どの商品をどこに置くというルールを決めることは簡単なのですが、その通りに運用することは難しく、すぐに商品の位置がおかしくなります。

商品のある場所が分からずに、人件費の高い正社員も含めて3人、4人で30分も1時間も探すようなこともあります。重い荷物もありますし、積み重ねてある商品の一番下のものを抜き出すこともありますし、歩く距離も長いですし、肉体的に負担が大きい業務です。

荷物を載せたゴンドラが人間のところに来る方法であれば、人間が重い荷物を持つ必要もなく、長い距離を歩く必要もありません。従業員の作業疲労を軽減できることに加えて、重労働が難しい女性や高齢者にも、働きやすい労働環境を提供することができます。

倉庫のような力仕事では、若くて体力のある男性を雇用できれば良いのですが、多くの企業がそう考えていますから競争は激しいです。日本では女性と高齢者の活躍が期待されていますが、働きやすい環境づくりへの投資はこれからも増えそうです。

10年後、20年後は今以上に高齢化社会が進んでいて、社会全体の体力が落ちることには不安を感じます。私の近所にはオープンから30年くらいの古いディスカウントストアがあるのですが、お客さんは高齢者ばかりになっていて社会環境の変化を感じさせます。

しかし、お店の設備は高齢化社会に対応しておらず、通路は狭く、商品は棚の上まで積み上げられていて、高齢者は買い物が大変です。職場の労働環境を改善することは重要ですが、お店で買い物をしてくれるお客さんの買い物のしやすさも同様に重要です。

小売業の業務にはロボット代替えできる規則的で単純な作業が多い

倉庫の自動化については数年前から記事を目にすることが多く、Amazonなどの海外の小売業が投資を行っています。倉庫ではお客さんと接することはありませんし、不規則な業務も少ないので、小売業の中でも自動化しやすい領域だと考えています。

倉庫の生産性を低くしているのは人間で、無駄な距離を歩いたり、荷物を落としたり、適当に荷物を積み重ねたりしています。ロボットの導入で人間の負担は小さくなり、生産性も高まるので、小売業の倉庫ではロボットによる自動化が進みます。

小売業の店舗ではロボットの導入は難しいと考えていたのですが、最近はロボットのPepperのテストがいろいろな業種のお店で行われています。店内業務にロボットを導入するうえで重要なことは、お客さんが協力的にロボットを使ってくれるどうかです。

企業にはコスト削減のためにロボットを導入したい動機がありますが、お客さん側にどのようなメリットをもたらすのかがカギです。現在、ニュースでロボットや人工知能が取り上げられていて、お客さんのテクノロジーへの関心が高まる状況は好ましいです。

あらゆる産業でロボットの導入による、コスト削減、生産性の向上が不可欠だと言われていますが、小売業でも期待が高まります。規則性がある単純な労働ほどロボットに置き換えやすいとされていて、小売業の業務ではそうした部分が多いです。

ロボットの導入で人間の仕事が減る可能性はありますが、それと引き換えに生産性の高い、女性も高齢者も働きやすい労働環境ができます。人間はお客さんと接触する業務に集中して、商品の運搬、店内の掃除、販売データの分析などはロボットが担当できます。