米Amazonの倉庫ではコストを削減するための自動化が進む

米Amazonの倉庫ではコストを削減するための自動化が進む

米Amazonが倉庫の自動化を進めていて、商品をピックアップするロボットの開発に力を入れているとのことです。今のところロボットにとって商品を掴む作業は難しいようですが、何年か後にはこうした技術的な問題も必ずクリアする日が来ると思います。

ロボットの導入で人件費、光熱費などのコストがカットできれば、さらにローコストオペレーションに磨きがかかることになります。Amazonは食品、日用品などの生活必需品を安売りすることで、人気ネットショップの地位を強固なものにできます。

自動倉庫システムではロボットが棚を人間が待つ場所へと運ぶ

自動倉庫では人間が棚の方へ歩いて行くのではなく、ロボットが棚を動かして、人間が待っている場所まで棚そのものを運ぶ仕組みになっています。人間が歩いて棚の商品を集める従来のやり方と比較すると変化が大きく、少し滑稽に感じるところもあります。

たくさんの商品が入っている棚を動かす仕組みは海外で生み出されたものですが、地震の多い日本では出てきにくい発想です。倉庫内に設置する棚は地震などで倒れないようにむしろ頑丈に固定するものなのですが、それを逆に動かすというのは本当に画期的です。

商品をピッキングするやり方が劇的に変わることで、倉庫業務がこれまで抱えていた問題点のいくつかが改善されます。商品を探して繰り返し歩く作業がなくなるとともに、重い商品を持つこともなく、従業員の体力的な負担が大きく軽減されます。

商品が正しいかどうかを確認する作業に集中できるので、間違った商品をお客さんに届けるミスも減ります。倉庫というと男性の力仕事のイメージがありますが、力仕事が減って各種確認作業が業務の中心になれば、女性にも働きやすい労働環境になります。

商品を保管する場所と人間が作業する場所がきっちりと分離されることで、倉庫全体の管理コストを下げる効果も期待できます。商品を保管するだけで人間が立ち入らない場所については、電気や空調のコストを抑えることができるのでコストの削減になります。

ロボットは人間ほど暑さや寒さを気にしませんし、病気やけがをすることもなく、作業に不可欠な照明も必要ありません。人間が倉庫の中を歩いて商品を集める従来のやり方の場合、倉庫全体を人間の作業場と考えて電気、空調を管理する必要があります。

ロボットは商品を掴む作業を繰り返すことで失敗を減らす

棚を人間のところまで持って来る作業は自動化されたので、次に自動化されるのは商品を取り出して箱に詰める作業です。ネットショップの倉庫での作業は、棚に入っている商品を掴んで取り出す作業と、商品を箱に詰める作業の2つに分けることができます。

棚から商品を掴んで取り出す作業はロボットが行って、商品を箱に詰める作業は人間が行った方が良いのではないかと考えています。商品を箱に詰める作業は掴む作業よりも難しそうですし、商品が間違っていないかを人間が確認しないのも心配だからです。

ロボットコンテストの動画があるのですが、ロボットが商品を落としたり、壊したりすることなく掴むことはまだ難しいみたいです。動画を見ていると商品を掴むパターンはロボットによって異なり、まだこれと言った掴み方のスタンダードはないように見えます。

人間であれば目の前の商品を掴んで取り出すだけの簡単な作業なのですが、人間にとって簡単なことでもロボットには難しいです。商品の形、重さなどは一つ一つ異なっているので、パターンを作ってロボットに記憶させることが難しいですし、商品も次から次に入れ替わるのでパターンを修正するコストも大きいです。

ロボットはたくさんの商品を掴む作業を繰り返すことで、自分で学習しながら失敗を減らして行くのだと思います。機械学習という言葉があって、将来のプログラムやロボットは人間と同じように学習する機能を持つことが普通になるそうです。

ロボットは人間と違って疲れることもありませんし、休む必要もありませんから、延々と学習を継続することができます。さらに、ロボットの経験はプログラムとしてコピーできますから、同じ品質のロボットを簡単に複製することもできます。

ロボットが人間の仕事を奪うことで格差が生まれる弊害がある

人間だけで運営していた倉庫は、多くのロボットと少数の人間で運営されることになると予想されています。人間とロボットが一気に入れ替わるのではなく、人間が仕事をしているところに補助をする感じで、徐々にロボットが入って来るイメージです。

倉庫のイメージは、たくさんの人間が働いていて、埃が舞っていて汚くて、ハードワークで大変な重労働といった感じでした。しかし、ロボット中心の倉庫はクリーンになり、人間の仕事は商品を探すこと、運ぶことから、ロボットを管理することへと変わります。

大人数で行っていた単純作業のピッキングの仕事が消えて、ロボットを管理する専門性の高い仕事を少人数で行うことになります。ロボットによって2極化が加速するとする意見がありますが、倉庫業務においてはまさにそのような構図になっています。

もともと安い給料で仕事をしていた多数の作業員が不要になり、ロボットを管理する給料の高いエンジニアが少数必要になります。たくさんの作業員に分配されていた給料が少数のエンジニアに行くことで、お金を持つ人と持たない人の差が拡大してしまいます。

ロボットが仕事を奪うことが恐ろしい理由は、これまで時間とお金を使って培ってきた技能や経験が無効化されてしまうからです。ピッキングの仕事自体が社会から消滅してしまうと、このスキルを活かして他の場所で仕事をすることも不可能になります。

ピッキングの仕事がなくなったからといって、専門性の高いロボットを管理するエンジニアの仕事へと転職することもできません。ロボットは作業の生産性を高める効果がある一方で、仕事を奪われた人間はどうするのかという新しい問題を生み出します。

Amazonはコストを削減して食品と日用品の安売りができる

自動倉庫によって人件費や光熱費などのコストが削減できれば、その分を商品の値下げに使うことができます。Amazonのように有名メーカーの商品を販売しているネットショップは、買い物の利便性と商品の価格の2つで他のネットショップと差別化します。

商圏の制約がないネットショップでは価格が安いお店に大量の注文が集まるため、競合よりも安い価格を付けようと、実店舗と比較して価格競争が激しくなります。Amazonの倉庫の自動化が進むことで販売コストを小さくできれば、それだけAmazonは安売りを行うための余力を持てることになります。

日本の小売業の話になりますが、家電量販店各社はAmazonの価格競争力に押されて、近年は売上も収益性も悪化しています。もともと実店舗はネットショップと比べて販売管理費率が大きかったところに、自動倉庫の活用が進めば、さらに価格面で劣勢に追い込まれてしまいます。

実店舗でもテクノロジーを導入して生産性を高めようとする動きがありますが、ネットショップよりも動きは遅いです。実店舗には倉庫にはいないお客さんがいて「想定外」のケースが多数発生するため、業務を効率化するにも時間が掛かります。

Amazonの立場に立ってみると、最も価格競争力を持ちたい商品は食品と日用品ではないかと考えています。お客さんにこれらの商品をAmazonで買ってもらいたいのですが、規模の大きな従来の小売業と比較すると、まだまだ価格が高い商品が多いです。

お客さんが頻繁に買い物をしている食品、日用品を低価格で販売することができれば、お客さんのAmazonでの買い物回数を増やすことができます。Amazonは豊富なカテゴリを扱っているため、食品、日用品で買い物回数を増やせれば、他のカテゴリも一緒に買ってもらうことで客単価が伸びるチャンスが大いにあります。