実店舗とネットショップで商品を販売するau WALLET Market

実店舗とオンラインショップで商品を売るau WALLET Market

携帯販売事業者のKDDIが、実店舗とネットショップの両方で商品を販売するau WALLET Marketをスタートするとのことでです。ネットショップには真新しさはありませんが、携帯販売事業者が実店舗で物販を始めるのは小売業として新しい動きです。

今後、ネットワークに繋がって動くIoT製品が登場してきますが、IoT製品を売る販路として携帯ショップは有望だと考えています。高齢者にネットショップで買い物をしてもらうことは小売業全体の課題ですが、auの実店舗と接客スキルのある店員を活かして、高齢者にネットショップでの買い物を促すこともできそうです。

auを含めた携帯電話事業者が新規事業として小売業に取り組む

ドコモ、ソフトバンク、auの携帯電話事業者3社が、小売業の領域で新サービスを始めています。ネットショッピングではソフトバンクにはYahoo!ショッピングが昔からありますが、ドコモも数年前にdショッピングをスタートしました。

ポイントサービスでは、ドコモはPonta、ソフトバンクはTポイントと連携することでポイントの利便性を高めています。auが実店舗とネットショップで物販に取り組むことも、ドコモやソフトバンクと同じように小売業の領域へ進出するものです。

最近はどんな業界でも新規事業が活発になっていますが、日本の人口減少が意識され始めたことが関係しています。携帯電話事業は収益が安定していてこれまでの蓄積も大きいですが、3社でほとんど独占している業界なので人口減少のダメージは大きいです。

また、低価格のスマートフォンの販売が増えていて、通信料については低価格化の圧力が強く、全体的に携帯電話関連事業の単価は下がってきそうです。携帯電話事業者には高収益で安定しているイメージもありますが、将来への危機感は強いのかもしれません。

携帯電話事業者は大きな資本が不要で高収益なビジネスである、ネットサービスを展開したかったはずです。パズドラ、クックパッド、ぐるなび、LINE、ツイキャスなどは人気のネットサービスですが、携帯電話事業者はこうしたサービスを開発できていません。

ソフトバンクにはYahoo!という超高収益ビジネスがありますが、ドコモとauにはこれといった独自のネットサービスがありません。携帯電話事業者がネットサービスよりも相対的に儲からない小売業に取り組むのは、「ネットサービスで儲けることが難しいから」という後ろ向きな点もあるのではないかと思います。

auは実店舗とオンラインで高単価の商品を効率よく販売する

auの戦略は「食」「美」「遊」「住」の4カテゴリの高単価の商品を売ることで、実店舗とネットショップの2つのチャンネルがあります。実店舗では携帯電話の手続きで来店したお客さんに対して、高単価の商品を定期購入で販売することを狙っています。

ネットショップでは高価格商品をディスカウント販売しているルクサの商品を販売するとのことで、こちらについては特に新しい感じはありません。大規模な小売業になることを狙って始めるのではなく、お客さんと接触する機会が多いことを活かして、高単価で利益率の高い商品を販売するビジネスのようです。

携帯電話に関する手続きはインターネット上で行えるものも増えていて、スマートフォンに詳しいお客さんは実店舗に来なくなります。実店舗に来るお客さんが減れば、接客を担当している店員の仕事量も減るので、別の作業に店員を活用することができます。

1人1人のお客さんに使える時間も増えますから、商品に興味を持ったお客さんに丁寧に接客をすることができます。高齢者のお客さんに対してスマートフォンの使い方を時間を掛けて説明しながら、そこをきっかけにして商品も売れるという流れがベストです。

auは小型店舗で高単価の商品を販売しようとしていますが、百貨店もこれから同じようなことをやるのではないかと考えています。小型店は売り場面積が小さいので品揃えが少なくなってしまうのですが、ネットショップを仮想売り場とすることで弱点を補えます。

実店舗に陳列できない商品は、タブレットやパソコンを使ってネットショップの商品を提案することで、購入してもらえるチャンスが増えます。もし、お客さんからの信頼が厚い百貨店が小型店を出店するようになれば、auのライバルになりそうです。

携帯電話事業者にはIoT製品の販売で主役になれる可能性がある

今後、IoT(モノのインターネット)と呼ばれる、ネットワークに繋がって動く新しいタイプの電化製品が登場して来ます。ウェアラブルデバイスと呼ばれる、時計やメガネなどが発売されていますが、積極的に利用する人は強い関心を持っている人たちだけです。

アメリカの記事で読んだ話ですが、洗濯機がインターネットに繋がっていて、洗剤が切れると自動でネットショップに発注するアイデアがあるそうです。IoT製品で毎日の生活が便利になりますが、お客さんにとっては買い物が難しい複雑な商品でもあります。

IoT製品の中心となる販路は家電量販店になると思いますが、auを含めた携帯電話事業者にも販売のチャンスがあります。そのように考える理由はIoTを利用する際のスマートフォンの重要性で、スマートフォンはIoT製品をコントロールする端末になります。

お客さんがスマートフォンとIoT製品を使ってトラブルになった場合、携帯電話会社に聞こうかと考えるお客さんも出てきます。こうしたお客さんをサポートして信頼を得られれば、携帯電話事業者がIoT製品を販売する販路として認識されるようになります。

家電量販店と携帯電話事業者をIoT製品の販路として考えたときに、それぞれに強みと弱みがあり、どちらのお店でもIoT製品を売るチャンスがあります。家電量販店には大きな売り場がありますが、携帯電話事業者は大規模な物販を想定していなかったのでお店は小さいです。

接客については、家電量販店の店員はお客さんにあまり信頼されていませんが、携帯電話事業者は携帯電話を丁寧に接客販売してきた実績があります。家電量販店はネットショップの攻勢を受けて利益が減少していますが、携帯電話事業者にはこれまで蓄積してきた資金が十分にあります。

実店舗で接客をして高齢者にネットショップでの買い物を促す

ネットショップ利用状況のアンケート調査を見ていると、高齢者は若い世代と比較してネットショップを使ったことがない人が多いです。しかし、ネットショップでの買い物の仕方については若い世代とは大きな違いがなく、毎月の利用回数、購入単価では、若い世代よりも高くなっているデータも見たことがあります。

ネットショップを日常的に使っている高齢者は少ないのですが、使い始めれば優良顧客になる可能性が高いことになります。高齢者にどうやってネットショップの仕組みを理解してもらい、使ってもらうかは非常に重要で、競合企業を出し抜いて高齢者のお客さんを囲い込みたいところです。

高齢者のお客さんがネットショップを利用しない理由ですが、ネットショップの必要性を感じることがないからだと考えています。これまでずっと実店舗で買い物をして来て不自由がありませんでしたし、歳を取るにつれて買い物をする商品も少なくなっています。

買い物難民が増加している事実はありますが、多くの高齢者のお客さんにとって、ネットショップは存在していないも同然の状況です。ネットショップ側から買い物をしてもらうように促さなければ、ネットショップの存在を意識することなく、これまで通り実店舗での買い物を続けます。

高齢者のお客さんにネットショップを利用してもらうためには、対面で直接向かい合って、目の前で端末を操作して、買い物方法を理解してもらう必要があります。携帯電話事業者にはお客さんと物理的に接触できる実店舗があり、しっかりとお客さんに接客ができる店員もいます。

先日、楽天はスマートフォンを販売する実店舗1号店をオープンしましたが、これには高齢者のお客さんとの接点を持つ狙いもあるのではないかと思います。もし、楽天が実店舗とネットショップを連携させて物販をするようになれば、お客さんは携帯電話事業者のお店で買い物をするメリットがなくなってしまいます。