ネットショップを強化してAmazonと競うヨドバシカメラ

ネットショップを強化してAmazonと競うヨドバシカメラ

家電量販店のヨドバシカメラはネットショップに積極的に投資していて、Amazonと同質化する方向へと向かっています。Amazonが従来の小売業に与えている圧力は低価格、品揃え、買い物の利便性で、ヨドバシカメラはこれに追随することでAmazonの影響を軽減しようとしています。

また、実店舗とネットショップを統合することで、お客さんに便利な買い物体験を提供することができます。お客さんが便利に買い物ができるということは、お店に来てもらえるチャンス、たくさんの商品を買ってもらうチャンスが増えるということです。

お客さんがAmazonで買い物をする理由は利便性と妥当な価格

Amazonが日本でネットショップを始めたのは2000年で、オンラインブックストアという位置付けでした。私もその頃にインターネットを始めたのですが、買い物をすることが面白くてAmazonや別のオンライン書店でたくさんの本を買いました。

本が自宅に配達されることの利便性よりも、世の中にどんな本があるのか、近々どんな本が出版されるのかを自宅で検索できることの方が画期的でした。書店の売り場面積は有限であるため、すべての書籍を陳列することはできないのですが、Amazonでは書店に並んでいない本でも見つけることができます。

その後、ゲーム・CD・DVDの販売を始めて、食品、家電、衣料品、雑貨など、品揃えの拡大が続いています。書籍が自宅に届くだけではさほど便利ではありませんが、書籍、食品、家電、衣料品、雑貨が一度にまとめて自宅に届くようになれば便利です。

買い物に時間と体力を使いたくないお客さんは、Amazonでたくさんのカテゴリをまとめて買い物するようになります。ネットショップ登場以前は複数のお店を回ることが当たり前でしたが、ネットショップ登場以後は当たり前ではなくなっています。

Amazonはネットショップの中では最も売上規模が大きいですが、従来の小売業と比較すれば売上規模はまだ小さいです。食品や日用品はスーパーやドラッグストアで買った方が安いですし、家電は必ずしも家電量販店よりも安いわけではありません。

商品をそれぞれ単品で見た場合、Amazonよりも価格が安いお店はありますが、それらを一度にまとめて買うことはできません。Amazonのお客さんは価格に関心がないわけではありませんが、大きく損をしない価格であればAmazonでまとめて買おうとします。

Amazonの価格と利便性は従来の小売業に影響を与える

Amazonが実店舗より勝っている点の一つは価格競争力で、ネットを通じて効率よく全国のお客さんに商品を販売して売上規模を拡大することで、さらに安売りをするパワーを持つようになります。Amazonは家電のカテゴリで既に価格競争力を持っていて、近年、家電量販店は売上と営業利益率が右肩下がりの傾向にあります。

Amazonの2014年度の売上高は約8,300億円とのことですが、家電の売上はこの中の一部分に過ぎません。一方、ヤマダ電機の直近の売上高は約1兆6,600億円もあるのですが、売上規模ではまだまだ小さいAmazonに大きなプレッシャーを掛けられています。

もう一つの強みは買い物の利便性で、お客さんは家から出ることなく複数のカテゴリをまとめて買うことができます。Amazonで何度も繰り返し買い物をしてリピーターになり、利便性に慣れてしまったお客さんは、時間と体力を使って複数の実店舗を回って買い物をすることが億劫になります。

家電量販店はAmazonの価格に押されていると考えられていますが、郊外にあるアクセスの悪いお店は立地の点でもお客さんに敬遠されるようになっています。インターネット上の情報収集だけである程度買い物の意思が固まれば、遠くの実店舗に出かけることなくネットショップで買い物を済ませてしまいます。

小売業にはたくさんのカテゴリがありますが、家電量販店が真っ先にAmazonの影響にさらされている理由は、お客さんがAmazonの価格と比較してから買い物をするからです。Amazonからの影響が小さいカテゴリは、価格比較がされないオリジナル商品かAmazonよりもまだ価格が安い商品です。

お米やお酒は買い物が大変なのでAmazonで売れそうな商品ですが、Amazonの価格が実店舗よりも高いことが多いのでそうはなっていません。しかし、Amazonが売上規模を拡大してさらに安売りができるようになれば、実店舗よりも安い価格で売られる商品も増えて来ます。

Amazonの対抗馬として存在感を強めるヨドバシカメラ

ヨドバシカメラがネットショップの品揃えと物流を強化していて、苦戦が続く家電量販店の中にあって、Amazonに対抗できる存在として注目されています。Amazonもヨドバシカメラもメーカーから商品を仕入れて販売するため、競争するポイントは価格、納期、アフターサービスなど、商品の価値以外のものになります。

価格の安さ、豊富な品揃え、配達の利便性が競争するポイントになりますが、Amazonとヨドバシカメラが小売業としてお客さんに提供する価値はほとんど同じです。ヨドバシカメラはAmazonと同じ価値を提供して、Amazonと同質化することで、お客さんに家電の価格のみを厳しく比較される状況を回避しようとしています。

ヨドバシカメラが他の家電量販店よりも有利な点は、家電以外のカテゴリを販売して来たノウハウがある点です。以前は家電以外のカテゴリに経営資源を割くことによって経営効率が悪くなり、家電の安売りにマイナスの影響があると考えられていました。

出店コストの安い郊外に出店して、家電だけを売るヤマダ電機、コジマ電気など、郊外型の家電量販店が人気になりました。しかし、家電の価格でAmazonで競争することが難しくなり、安売り以外で収益を上げる方法を模索しなければならなくなっています。

Amazonとヨドバシカメラは競合することになりますが、EC市場が順調に成長することが見込まれているので、両社とも十分に儲かるのではないかと思います。ヨドバシカメラには実店舗で獲得した既存顧客がいますから、ネットショップの品揃えが充実すれば既存顧客の利用によって客単価が伸びます。

急に品揃えを拡大するとお客さんに品質や専門性を疑われますが、これまでも実店舗で幅広いカテゴリの商品を販売して来たヨドバシカメラ実績はお客さんの信頼を得られます。ヨドバシカメラは顧客満足度調査では常に上位に来る人気企業で、ヨドバシカメラの熱心なファンは何でもヨドバシカメラで買おうとします。

実店舗とネットショップの違いを感じさせないオムニチャネル

実店舗を運営してきた小売業がネットショップを始める場合、実店舗と切り離した形で実験的に取り組むことが多いです。そうすると、実店舗とネットショップではサービスの内容が異なっていたり、情報の共有ができていないなどの問題が発生します。

ヨドバシカメラではポイントの付与率、商品の保障内容が異なっていたのですが、これを実店舗とネットショップで統一しています。実店舗とネットショップのどちらで買っても同じサービスが受けられれば、お客さんは実店舗とネットショップを意識することなく、自分が都合が良い方を選択することができます。

ヨドバシカメラのオムニチャネルの場合、お客さんに便利なサポートを提供できる点は強みになりそうです。テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電は生活に欠かせないものですから、トラブルがあると毎日の生活に支障を来すため、お客さんの不安も大きいです。

将来、実店舗とネットショップの買い物履歴が統合されれば、お客さんはオンラインからいつでも簡単にサポートを申し込めます。保証書を無くす心配もなく、お店の営業時間を気にすることもないので、家電のトラブルによるストレスが軽減されます。

ヨドバシカメラは都市部の主要駅近くに大型店を23店舗出店していて、郊外型の家電量販店と比較して店舗数が少ないです。店舗数が少ないことのメリットは、人材の採用・育成が容易、外部環境の変化に強い、構造改革がしやすいなど、今の時代に適しています。

実店舗とネットショップを統合させたオムニチャネルにおいて、家電量販店の場合、実店舗の数が少ないほど高収益が期待できると考えています。リスクを背負って新規出店を行うのではなく、オムニチャネルによる買い物の利便性の向上、その結果もたらされる既存店の活性化がヨドバシカメラの成長戦略ではないでしょうか。