ユニクロのオムニチャネル戦略は実店舗の販売効率を高めるもの

ユニクロのオムニチャネル戦略は実店舗の販売効率を高めるもの

ユニクロがオムニチャネルへの取り組みを発表していて、ユニクロでの買い物方法が大きく変わるとのことです。店舗数を増やして規模を拡大することが難しくなりつつある行く中で、ネットショップ、ショッピングアプリなどのテクノロジーへの投資が小売業の新しい成長戦略になりそうです。

お客さんがインターネットやネットショップを積極的に利用している状況ですから、これに対応しなければ買い物をしてもらえなくなります。実店舗での個人データの収集・活用も発表されていて、収集方法、活用方法がどのようなものになるのか注目です。

高齢化社会の進行によって小売業の競争環境はさらに厳しくなる

小売業では規模を拡大して価格競争力を持つことが重要で、大企業が大型店舗を作って売上を伸ばして来ました。大企業の成長の裏では個人店舗や商店街が苦戦していて、商業統計を見ると店舗数が減り続ける一方、売り場面積は増え続けています。

このデータが意味することは、売り場面積が大きい大型店が増えて、売り場面積が小さい小規模店舗が減っているということです。小規模店舗が潰れても大規模店舗が売上を伸ばしていますから、小売業全体で悲観的になることはありませんでした。

最近は業界によっては大企業でも利益を確保することが難しくなり、小売業全体でも悲観的な意見が増えています。例えば、家電量販店は10年前はほとんどすべてのチェーンが儲かっていたのですが、今ではトップのヤマダ電機でさえも利益が減っています。

ホームセンター業界も全体的に利益率が高く安定していたのですが、売上や利益が不安定になる企業が出ています。高齢化社会の進行により小売業全体の需要も縮小してしまうため、大企業同士でも競争が激しくなり、収益性が悪化することになります。

ユニクロは日本を代表する高収益のファッション企業ですが、成長が鈍化していると言われることが増えています。ユニクロの出店情報を見てみると、2013年期は出店数47、閉店数は39、2014年期は出店数51、閉店数51、2015年期は出店数36、閉店数48となっています。

3年という短い期間のデータではありますが、時間経過とともに国内の店舗数を増やすことが難しくなっていることが分かります。家電量販店とユニクロの話は小売業の一部に過ぎませんが、人口の減少、競争の激化によって多くの企業で新規出店が難しくなると考えています。

実店舗だけではなくネットショップを活用して売上を増やす

実店舗とネットショップを統合したオムニチャネルは小売業の新しい戦略で、ユニクロもこれに力を入れることを発表しました。実店舗とネットショップの両方をお客さんに使ってもらい、便利に買い物をしてもらって売上を増やす狙いです。

こうした便利な買い物はお客さんが求めているものですが、小売業にとってもオムニチャネルへの投資は様々なメリットが期待されています。ネットショップを含めたテクノロジーに投資をすることで、売上が停滞している実店舗が活性化する効果もあります。

ネットショップで商品を見てもらうことは、実店舗で買い物をする前の予備接客だと言うことができます。実店舗に買い物に来る前に何も情報を持っていないお客さんと、実店舗に来る前に商品に目星を付けているお客さんのどちらが好ましいでしょうか。

私は後者のお客さんの方が好ましいと考えていて、目的の商品を忘れることなくきっちり買ってもらえるので売り逃しによるロスが減ります。もちろん、何らかの理由で実店舗に来ることなく、ネットショップでそのまま注文してもらっても嬉しいです。

実店舗を増やすことが難しくなっているユニクロが、テクノロジーの投資に力を入れるのは順当だと思います。実店舗の数を増やせば新しい売上が増えて規模が拡大しますが、そのことが他の既存店に大きなメリットを生み出すことはありません。

一方、テクノロジーへの投資はすべての実店舗にメリットがあるため、投資効率の点でも実店舗を増やすよりもテクノロジーが良さそうです。小売業がテクノロジーへの投資することは、言い換えればテクノロジーを使った実店舗の活性化になります。

お客さんとの接触機会を増やさなければ売上を失ってしまう

ユニクロは2000年代の初め頃に低価格の衣料品で知名度を高め、その後も長い間好調を維持している日本を代表する小売業の一つです。最近は価格の値上げがあったり、競合企業の商品の品質が良くなったりと苦戦している感じもありますが、依然としてお客さんのユニクロへの信頼は強いです。

一般的に、魅力的な商品を持っている小売業の商圏は広く、郊外のアクセスが悪い立地にお店があってもお客さんは買い物に来てくれました。私の周辺の話ですが、ユニクロのお店は都市部では商業施設内など好立地にありますが、郊外のお店はユニクロに行くことだけが目的になるような不便な場所にあります。

良い商品を持つ小売業はこれまであまり立地について気にする必要はなかったのですが、インターネットの時代では立地が重要になっています。ネットショップでも満足できる商品が買えるようになれば、お客さんはわざわざ遠方にあるお店まで買い物に行かなくなります。

お客さんのこうした動きが顕著に現れているのが家電量販店で、ヤマダ電機は全店舗数の5%近くにあたる郊外の店舗を閉店することを決めました。家電量販店の場合はネットショップに価格で負けてしまうことが多いですから、遠方にあるお店にわざわざ高い商品を買いに行くというのは期待しにくいことです。

ユニクロは付加価値のある商品を持っているから立地が悪くても大丈夫かというと、必ずしも安泰ではなく、お客さんがやって来なくなるリスクはあります。どんなに優れた商品を持っていたとしても、ネットショップも使ってお客さんと接触する機会を増やした方が良いです。

商品の品質競争は成熟していて差別化が難しくなっていますから、ユニクロの商品に優位性を感じなくなっているお客さんも増えています。こうしたお客さんを離脱させないためにも、実店舗以外のチャンネルでお客さんと接触する機会を作りたいです。

個人データを活用することで販売効率を高めることができる

ユニクロは店舗で個人データを収集しておらず、これからは個人データを収集して活用するとのことです。具体的にどういう風にやるのかは新しい情報が出てきないと分からないのですが、個人情報の活用も小売業の新しい戦略の一つになりそうです。

これまではお客さん個人のデータを収集することが難しく、POSデータの単品ごとの販売数を重視するやり方が主流でした。スマートフォンや電子マネーを利用する人が増えれば、個人情報の収集も短期間で進むのではないかと期待されています。

個人情報を使ってどうやって売上を増やすかですが、注目を集めているのは個人個人に合ったレコメンドです。これはAmazonなどのネットショップで既に成功を収めていて、実店舗でもスマートフォンアプリを使って行われるようになります。

興味がある商品を的確に提案すればお客さんに喜ばれますが、商品の提案が合わなければ逆に嫌われてしまうリスクもあります。その他、お客さんの買い物動向を詳しく知れば知るほど、品揃えや在庫管理においても効率が良くなることが期待できます。

少子高齢化の進行、ネットショップの普及によって、実店舗からはお客さんが流出して行くことになります。古いお店ほど売り場面積が大きいことが多く、売り場が余ってしまい販売効率が悪くなるのですが、どうにかしてこの影響を小さくしたいです。

販売効率の悪化に対応するための方法の一つは、お客さんの需要をきっちりととらえ、それを売り場の品揃えに反映することです。個人データの収集はお客さんの需要を知るためのベストの方法ですから、多くの小売業が取り組むことになると思います。