商品のライフサイクルが急激に短くなっている原因はなにか

商品のライフサイクルが急激に短くなっている原因はなにか

企業が開発する商品のライフサイクルがますます短くなっていて、企業が生き残ることが難しくなっているとの記事があります。商品のライフサイクルが以前と比べて短くなる原因について、いくつかのビジネス環境の変化をあげてみました。

多くの産業で日本のマーケットは成熟していて、これからは人口の減少によって縮小することが予想されているため、企業間でお客さんの奪い合い競争が激しくなることは確実です。商品の開発では差別化が難しく、多くの企業が似たような商品を開発するため、お客さんが飽きるスピードも早くなります。

品質の改良余地が少なくなりお客さんに感動を与えられない

息の長いヒット商品にはどんなものがあるかを考えてみると、ユニクロのヒートテックは長期に渡って成功を収めているヒット商品だと言えます。ヒートテックは2003年に発売された商品ですが、お客さんの認知度は高く2015年になった今でも売れています。

どこのお店に行っても似たような商品が並んである今日では、「競合他社よりも特別優れた商品」というものが多くはなく、ヒートテックのように多くのお客さんに認知されている商品は少ないです。お客さんにこの商品は特別優れていると認知されてこそ、企業は商品を高く売ることができ、高い利益率が可能になります。

ヒット商品を生み出すことが難しくなっていると感じますが、これは商品の品質を改良する余地があまりないからだと考えています。例えば、家電は日本の産業の中でも衰退している産業ですが、お客さんがもはや家電に興味がないのだと思います。

「家電にどんな新機能を求めていますか?」と聞かれても、特に日常生活で困っていないので答えることができません。こうした状態は家電以外の多くのカテゴリにも共通することで、商品の機能でお客さんを感動させることが難しくなっています。

お客さんは日常生活においてある程度の満足を得ており、解決しなければならない重要な問題を抱えているわけではありません。このような状況で企業は大胆な新商品を提案することが難しく、過去の成功体験の延長線上の商品を作る方が安全です。

過去のヒット商品をリメイクしたり、復刻版を出したり、小さくてもいいので堅実な成功を掴もうとしている企業が増えている印象があります。このやり方だと大きく失敗する可能性は低いですが、成功も長続きしないので商品のライフサイクルは短くなります。

異業種間での商品開発競争が活発になり似たような商品が増える

小売業でも飲食業でもそうですが、業種間の垣根がなくなり、どの企業がどの商品を売っても問題にならなくなっています。昔は特定のカテゴリに特化することでお店の専門性が高まり、何でも売るお店はお客さんに信頼されないと考えられていました。

無印良品では衣料品、家具、家電なども開発・販売していますが、もともとの雑貨屋のイメージを壊すことはありません。また、回転寿司店ではラーメン、カレー、デザートも販売していますが、回転寿司店のイメージを悪くすることもありません。

業界を問わずに様々な商品を企画・開発するようになったことで、商品の開発競争がますます加速します。しかし、「特に欲しいものがない」というお客さんの状況は変わらず、大きな失敗を避けるために各企業は似たような商品を開発することになります。

お客さんはあちこちのお店で似たような商品を目にするようになれば、それだけ早く飽きてしまうことになります。ニトリは家具の製造小売業として価格と品質の点でオリジナリティを発揮して来ましたが、無印良品にも似たような家具が増えて来ています。

類似商品が増えることの事例としては、コンビニのフライドチキン、スイーツ、コーヒー、ドーナツがそうです。既存の商品の改良が難しくなっている中で、成功企業の商品を真似て新商品を開発して、低価格と好立地を活かして大量販売しています。

コンビニの成功を目にした総合スーパー、食品スーパーもこれに続いて、店内でコーヒーを販売するお店が出てきています。後から参入する企業ほどローコストで商品開発ができますから、次々に低価格の類似品が登場して儲かりにくくなってしまいます。

ソーシャルメディアの普及により商品の消費が素早く行われる

多くの人がソーシャルメディアを使うようになっていることも、商品のライフサイクルが短くなったことに影響していると思います。ソーシャルメディアが登場する以前は、消費者はテレビ、新聞、雑誌などのメディアを通じて商品の情報を得ていました。

従来のメディアを通じて得る商品情報は「広告」でしたから、お客さんはその商品が優れているのかどうかまでは分かりませんでした。しかし、ソーシャルメディアで得られる商品情報は利用者のレビューも付いているので、どの商品が売れているのか誰でもすぐに分かります。

ソーシャルメディアでは次から次に新商品が紹介されるので、お客さんが一つの商品に注目する期間は短くなります。よくあるケースは商品がソーシャルメディアで予想外に人気になってしまい、欠品が発生して販売機会を失ってしまうことです。

補充する商品を生産している間にお客さんの関心が薄れてしまえば、企業は儲けるチャンスを逃してしまうことになります。ソーシャルメディアが普及したことによって、企業の商品開発・販売の戦略に大きな影響が出るようになっていると言えます。

商品が一気に売れてもジワジワ売れても売上は同じなのですが、多くの企業にとってジワジワ売れる方が好ましいです。商品が短期間で一気に売れて一気に飽きられてしまうと、企業は次から次に新商品を開発しなければならないプレッシャーが強くなります。

次々に新商品を開発できる一部の有力企業がお客さんの注目を集め、開発できない企業の存在感は小さくなります。コンビニの業績が好調な理由は、新商品を次々に開発する企画力・開発力を持ち、商品のライフサイクルが短くなることに耐えれるからです。

ライフスタイルの多様化で大量生産・大量販売が難しくなる

小売業、飲食業、製造業、すべてに言えますが、利益を最大化する方法は、少数の商品を大量生産・大量販売することです。調達、生産、宣伝、販売など、商品が少ないほどあらゆる経済活動が効率よくなり、企業は高い利益率を得ることができます。

昔はダイエーが大量仕入れで安売りをしていましたし、近年でもユニクロ、ニトリ、ABCマートなどの製造小売業が同様に大量販売による安売りをして来ました(ユニクロはもう安くないという意見が多いです)。少数の商品が大量に売れる理由はお客さんの需要が均質化しているからですが、企業にとっては対応が簡単だと言うことができます。

現在は昔とは異なりお客さんのライフスタイルが多様化していて、徐々に大量生産、大量販売が難しくなって来ています。賃金の格差が生まれたこと、結婚をしない人が増えたこと、子供の数が減ったこと、インターネットが登場したことなどがその理由です。

昔は学習机と言えば高級品で、8-10万円くらいの高価格帯に少量の種類を揃えて大量生産、大量販売することが多かったです。今は2万円くらいから1万円刻みで品揃えするようになり、売れ筋が分散してしまうとそれだけ各種流通コストが掛かることになります。

一つの商品で多くのお客さんのニーズを満たせることができた時代は、新商品の開発スパンが今よりも長かったと言えます。お客さんのライフスタイルが多様化してニーズも多様化すれば、それを満たすために必要となる商品の種類は昔に比べて増えます。

ユニクロの値上げは原材料費の高騰によるものとされていますが、商品数が昔よりも増えていることも影響していると思います。商品数が増えれば複数の商品に売上が分散しますが、売上が小さい商品は早々にラインナップから外されるようになります。