郊外を中心に店舗を展開していたニトリが都市部に小型店を出店

郊外を中心に店舗を展開していたニトリが都市部に小型店を出店

都市部に出店するためのニトリの新しい店舗フォーマット、「ニトリデコホーム」を写真付きで詳しく紹介する記事があります。郊外で成功を収めて来たニトリが都市部に出店することは、郊外立地でのビジネスが今後難しくなることを意味しています。

小売業にとっては「衝撃的」ではあるのですが、高齢化社会の進行、ネットショップの普及など、郊外が衰退する理由はあります。ネットショップで注文してもらい、アクセスの良い都市部の店舗で商品を受け取ってもらう新しい買い物方法も期待されています。

業界にライバルがいないニトリは独り勝ちの状態が続いている

ニトリは20数年以上の長期に渡って増収増益を続けている、小売業の中でも営業利益率、営業利益額ともにトップクラスの超優良企業です。ニトリを含めて成功する小売業では既存店の売上が伸びるのですが、これはお客さんがお店に満足している証拠です。

家具は小さな会社が一つ一つ作るイメージがありましたが、ニトリは早くから大量生産・大量販売に取り掛かりました。小規模のローカルチェーン、売り場が小さいホームセンターではニトリに太刀打ちできず、市場を独占する企業になっています。

ニトリは世界最大の家具製造小売業のIKEAを手本にして、商品の製造から販売の仕組みを作ったとされています。2006年にIKEAが日本に大型店を出店したのですが、この時はニトリがIKEAにお客さんを取られるのではとの不安もありました。

蓋を開けてみれば、ニトリにはこれと言った変化は見られず増収増益を続けていて、IKEAもニュースやソーシャルメディアではよく話題になるので順調に行っているようです。ニトリとIKEAの両社が成功を収めているのを見て思うことは、家具・インテリア業界は中小企業が多く、規模の拡大を志向する企業が極端に少なかったということです。

ニトリはこれまで郊外を中心にお店を作っていて、私の周りにあるお店は駐車場数、売り場面積ともにだいたい似ています。ニトリの業績は長い間好調を続けていますから、現在の店舗フォーマットに何か緊急の問題があるわけではありません。

独占的に成功しているニトリが新しい店舗フォーマットを始めるということで、小売業全体から見ても注目の動きです。ユニクロもネットショップの強化を進めていて、小売業には「新しい売り方」が必要になっているのだと思います。

都市部へ出店する理由は逃してていたお客さんを獲得するため

都市部に出店するお店は集客力のある商業施設内に小型店を出店するもので、「ニトリデコホーム」という新しい店舗名が付けられています。基本的には商品の配送サービスは提供していないため、お客さんが自分で持って帰れる小型の商品が中心になります。

仕事帰りに布団シーツ、テーブルクロス、小物家具、カーテンを見たいと考えているお客さんは少なくないと思います。総合スーパーなど身近なお店の商品や価格が気にいらないとしても、こうした小物商品のために郊外の店舗に出かけることは面倒です。

従来のニトリの客層は30代と40代が中心になっていて、お客さんのほとんどが車で郊外のお店に時間を掛けて買い物に出かけます。一方、商業施設内に出店する立ち寄りやすいニトリデコホームでは、郊外とは客層が大きく異なり、10代や50代のお客さんが多いとのことです。

大型家具を買うときには20代や50代のお客さんも郊外に行きますが、必要な商品が多い30代や40代のお客さんほど積極的ではありません。買い物をする商品が少ない消極的なお客さんに商品を売るためには、お店の方から買い物がしやすいように近づいて行く必要があります。

都市部に出店するニトリデコホームは既存の郊外店舗との競合もなく、新しいマーケットを生み出すことができます。最近は100円ショップやディスカウントストアの生活雑貨が人気で、ニトリにも小さな売り場で雑貨を販売して売上を伸ばすチャンスがあります。

衣料品店のしまむらは昔はおばさんの洋服屋でしたが、若いお客さんを開拓することにも成功しています。ニトリもどちらかと言えばおじさん、おばさんの家具屋ですが、若いお客さんを開拓することでしまむらと同様の成功が収められます。

今後の出店は郊外ではなく商業施設内への出店が中心になる

この記事では店舗の建築コストが高騰していて、郊外で単独店をゼロから作ることの負担が大きくなっているとあります。2000年くらいから郊外に飲食店、小売店の専門店が大量に出店したのですが、一番の理由は出店コストが安いことでした。

専門店は粗利益率の高い商品を持っていることが多いですが、コストが安い郊外の立地も専門店の高い利益率に貢献しています。建築コストの高騰で郊外のうまみが小さくなっているとすれば、小売業、飲食業の今後の店舗展開にも影響が出そうです。

これからの出店は郊外ではなく、「都市部の商業施設内が中心になる予定」という点は個人的には大きな衝撃を受けました。郊外店舗で成功を掴んで来たニトリが郊外への新規出店を減らすわけですから、これまでの成功パターンはもう終わるということです。

郊外立地では複数の専門店が近接していることが多く、複数のお店が近接していることにより、その地域の集客力が高まる効果があります。郊外の既存店が減ったり、新規出店が減ったりすると、郊外の集客力が加速度的に落ちて衰退する可能性が高くなります。

郊外の店舗はお客さんに自動車で来店してもらう負担を掛けますが、その代わりに低価格で質の良い商品を提供してきました。しかし、高齢化社会が進行して来ると、いかに商品が魅力的でも遠方まで買い物に出かけることが大変になります。

さらに、ネットショップでも専門店と同等の商品が買えるようになれば、物理的に遠い郊外店の魅力は小さくなります。ニトリがこれまで成功して来た郊外型の店舗を減らすのも、郊外の集客力がこれから落ちると考えているからだと見ています。

郊外店舗・都市型店舗・ネットショップとチャンネルが広がる

お客さんの奪い合いが始まっている小売業で重要になっていることの一つは、お客さんと接触するチャンネルを増やすことです。実店舗とネットショップを統合するオムニチャネルは、お客さんとの接触を増やす大きな効果が期待されています。

オムニチャネルにおいて重要になるのが実店舗の数で、実店舗が多いセブンイレブンは便利な買い物体験を提供することができます。ニトリが都市部に新しい店舗フォーマットを出すことも、お客さんとの接触ポイントを増やすのでオムニチャネルを補強する効果があります。

都市部の小型店は売り場面積が小さくなりますが、売り場面積の小ささはネットショップを仮想売り場にすることで補えます。例えば、色違いの商品は全種類陳列する必要はなく、ネットショップで紹介すれば実店舗の売り場面積は不要です。

もちろん、すぐに持って帰れなければ注文を失う可能性はありますが、店員がネットショップの商品をうまく紹介できれば繋ぎ止めることはできます。都市部の店舗は無理なくアクセスができますから、店頭に取りに来てもらえれば宅配の送料も掛かりません。

これまでは日本全国に実店舗を拡大することが当然でしたが、オムニチャネルの時代では実店舗がすべてではありません。実店舗とネットショップを絡めて商品を販売するようになれば、日本全国に大きな売り場を持たなくても済むかもしれません。

ニトリの都市部の店舗がアクセスの良いショールームとして機能して、ネットショップの売上が伸びることが期待されます。郊外にまで買い物に来てもらうことが難しくなれば、都市部の店舗やネットショップが新しい販路として重要になって来ます。