製造小売業が高い営業利益率を維持したまま市場を独占している

製造小売業が高い営業利益率を維持したまま市場を独占している

小売業の決算発表を見ていると、ファーストリテイリング、ニトリ、ABCマートなど製造小売業の営業利益率が非常に高いです。小売業全体では営業利益率が低下傾向にあると感じるのですが、そうした中で製造小売業の高い営業利益率がさらに目立っています。

製造小売業の商品が支持される理由は価格が安いことですが、お客さんの商品への関心が低下していることもあります。そこそこの商品が安く買えればよいと考えているお客さんが増えれば、製造小売業はさらに簡単に大きな利益を稼ぐことができます。

ファーストリテイリング、ニトリ、ABCマートの営業利益率は高い

ファーストリテイリングの第1四半期の決算情報によると、売上高は479,543百万円、売上総利益は226,266百万円、営業利益は91,370百万円となっています。売上高と利益額から利益率を計算すると、粗利益率は47.1%、営業利益率は19.1%と非常に高収益になっています。

ユニクロの国内売上が頭打ちになりつつあるなどと言われますが、成長が鈍化したとしても大きく儲かっています。ファストファッションでは国内にこれと言ったライバルもなく、国内の売上が伸びなくなっても高収益企業であり続けるはずです。

ニトリの最新の第3四半期までの累計データによると、売上高は310,486百万円、売上総利益は161,986百万円、営業利益は52,514百万円となっています。売上高と利益額から利益率を計算すると、粗利益率は52.1%、営業利益率は16.9%と非常に高収益です。

IKEAが日本にやって来る時は強敵になると言われていたのですが、ほとんど影響がなく成長を続けています。ニトリがIKEAよりも優れているというよりは、ニトリもIKEAも受け入れることができるくらい、日本の家具・インテリア市場が大きいのだと見ています。

ABCマートの最新の第3四半期までの累計データによると、売上高は158,041百万円、売上総利益は87,635百万円、営業利益は32,079百万円となっています。売上高と利益額から利益率を計算すると、粗利益率は55.5%、営業利益率は20.3%となり、お客さんの立場からるすると低価格の靴のイメージがありますが実は高収益です。

靴を販売する専門店はABCマート、チヨダ、ジーフットなどが有名ですが、ABCマートの認知度は特に高く、お客さんを独占して高い利益率を実現しています。ABCマートは2000年代に入ってから業績を伸ばしている企業で、それまでは「同じ型番の靴を低価格で大量に売る」というような考えが業界にもありませんでした。

自社で商品の企画・製造に深く関わることで高利益率を確保

多くの小売業がメーカーから商品を仕入れて販売するのに対して、製造小売業は自社で商品の企画・製造を行い、自社で製造した商品を自社のお店で販売しています。ニトリの創業は1972年、ファーストリテイリングは1974年、ABCマートは1985年となっていて、これらの企業が創業した時期は既にお店でメーカー品が売られていました。

メーカー品は仕入れて売るだけなのでお店にとっては楽なのですが、その分お店の付加価値が小さく利益率は低くなります。一方、自社で商品を作る製造小売業は仕入販売よりも遙かに苦労が多いのですが、その苦労の分だけ高い利益率が得られます。

ファーストリテイリング、ニトリ、ABCマートの商品は競合メーカーの商品と比較すると安く、お客さんには低価格の商品として認知されています。しかし、低価格の商品にもかかわらず利益率は非常に高くなっていて、お客さんは安くて良い買い物をしたと満足していますが、一方でお店側は小売業界で突出した儲けを得ています。

両者ともにWin-Winの関係になっていて、お互いがお互いを必要としているので企業の売上は伸び続けます。見方によってはお客さんは高く買わされているとも言えなくもないのですが、それだけの利益率を得るだけの企業努力もあり順当なことです。

ファーストリテイリング、ニトリ、ABCマートは海外にも店舗を展開していますが、ファーストリテイリングとABCマートは既に大きな売上を上げています。製造小売業は自社で商品の製造を行っていますから、売上規模が大きくなるほど商品の製造原価が下がり、大きな利益を得ることができます。

素晴らしい商品を作れるメーカーがあったとしても、自社で店舗を運営するノウハウがなければ売上を急拡大させることはできません。商品を作るノウハウ、お店を運営するノウハウの両方があるからこそ、海外にも出店して売上を伸ばすことができています。

小売業の中でも製造小売業の商品が下に見られる時代があった

私は1990年前後に初めてユニクロの洋服を買ったのですが、その頃はまだユニクロの知名度はほとんどありませんでした。当時は安い洋服を買うのであれば近所にある総合スーパー、高い洋服を買うのであれば駅前にある百貨店や商店街といった具合でした。

ユニクロでトレーナーを買ったのですが、洋服の内側がゴワゴワしていて着心地が悪く、残念な思いをしたことが記憶に残っています。今でこそ優れた品質の商品を提供していますが、かつては総合スーパーの商品に品質で負けている時代もありました。

ニトリのお店を初めて見たのは2000年代の初め頃で、当時は私は雑貨や家具を担当していたので同僚と視察に行きました。お客さんは各家具メーカーを詳しく認識していませんが、小売店では有名メーカー品と無名メーカー品は区別して展示しています。

当時は有名メーカー品の家具こそが素晴らしく、東南アジアで製造された無名メーカー品は低品質だと考える人が多かったです。お客さんがニトリの品質をどう見ていたかは分かりませんが、家具店の店員もメーカーの営業マンも下に見る人が多かったです。

ユニクロやニトリが成長したのはデフレのおかげだと言われていますが、デフレの影響は製造小売業の成長を促しました。日本の景気が低迷する中で生活必需費でも低価格の商品が求められ、ユニクロやニトリは多くのお客さんを得ることができました。

お客さんに商品をたくさん販売する中で品質が高まっていき、低価格で高品質の商品へと成長していきます。今では自社で商品の企画・製造を始める小売業も増えて来ましたが、ユニクロ、ニトリの成功は長い時間を掛けて作られたものです。

お客さんの品質への関心がなくなれば製造小売業が市場を独占する

以前は有名メーカーの商品こそが優れていると考えられていましたが、最近はあらゆるカテゴリでそこそこの品質のものが買えます。例えば、有名メーカーのボールペンは書きやすいですが、100円ショップのボールペンでもそこそこ満足できます。

フライドチキンと言えばケンタッキーが独占状態でしたが、最近はコンビニのフライドチキンで満足しているお客さんもたくさんいます。有名メーカーが革新的な商品を生み出すことに苦戦している中で、製造小売業は商品の品質を高めて追い付いて来ています。

百貨店は衣料品の売上が低迷していますが、その理由はユニクロやしまむらにお客さんを取られたからだとされています。百貨店とユニクロの衣料品では客層が違うと考えられていましたが、百貨店のお客さんの心理に変化があったのだと思います。

商品の質では百貨店の方が勝っているはずですが、高品質の商品を求めるお客さんが減っているのではないでしょうか。お客さんが高品質の商品に関心を持たなくなり、安くてそこそこの品質でいいやとなると、高品質の商品を作っても買ってもらえません。

ファーストリテイリング、ニトリ、ABCマートなどの製造小売業が各業界で市場を独占している理由は、品質の差別化が難しくなっていることだと考えています。製造小売業の商品の質は年々改良される一方、お客さんの高品質商品への関心が薄れているため、製造小売業の商品の価格と品質のバランスがお客さんのニーズにマッチしています。

品質での差別化が難しい中で、価格が安い製造小売業の商品に人気が集まり、大きな売上と高い営業利益率を得ています。お客さんの立場からすると、低価格で商品を売っているように見えるのですが、実際は粗利益率が高く、大きな利益を稼ぎ続けています。