セブンイレブンのロスチャージ問題とコンビニの値下げ販売

セブンイレブンのロスチャージ問題とコンビニの値下げ販売

セブンイレブンとオーナーの間で値下げ販売についての訴訟が行われていましたが、セブンイレブンの敗訴が確定したようです。オーナーが値下げ販売を行う背景には、商品を廃棄することでオーナーの損失が増えるロスチャージの仕組みがあります。

私はコンビニの値下げ販売には反対で、値下げ販売をしてしまうとこれまで維持していた高価格が壊れてしまいます。お客さんの立場としては安く買い物ができるので嬉しいですが、コンビニ業界全体の利益を毀損することになってしまいます。

セブンイレブンでは廃棄した商品からもロイヤリティが発生する

セブンイレブンを含めコンビニ業界はフランチャイズビジネスになっていて、直営店もありますがフランチャイズ店が多いです。フランチャイズのオーナーになるメリットは、企業が商品、什器、販促物、販売ノウハウなど、店舗を運営するための必要な物、知識を提供してくれるため、お金とやる気があれば誰でも開業できることです。

一方、デメリットは経営の独自性がないため、お店がうまく行かなくなっても勝手なことはできません。企業はオーナーに対して商品や店舗を運営するノウハウを提供する代わりに、売上や利益の中からロイヤリティと呼ばれる手数料を取るようになっています。

セブンイレブンの場合は売上総利益からロイヤリティを徴収するのですが、セブンイレブンの利益計算方法では廃棄する商品(ロス)は売上原価に含まれない仕組みになっているとのことです。たくさんの商品を売るためにはたくさんの商品を陳列する必要がありますが、売れ残る商品も多くなるため、お店が廃棄する商品の金額も膨らみます。

しかし、セブンイレブンの場合は廃棄した商品は売上原価に含まれないので、お店の売上総利益は「不当に」大きく計算されてしまうことになります。この不当に大きく計算された利益からロイヤリティを徴収することを「ロスチャージ」と呼んでいて、10年くらい前から元オーナーさんがネットにこの問題の情報を投稿しています。

今回、ロスチャージに関連する裁判の結果が出て、セブンイレブンが敗訴したということです。売れ残り商品からロイヤリティを取ることの良し悪しではなく、値下げ販売をしようとしたオーナーをセブンイレブンが妨害したことが違法との判断です。

売れ残ってしまうとロスチャージが発生してしまうため、オーナーとしては値下げをして少しでも売上を回収しようとします。一方、セブンイレブンは様々な理由から値下げ販売をして欲しくないので、オーナーとセブンイレブンの間で対立が生まれます。

廃棄を恐れて発注を減らしてしまうとお店の魅力がなくなる

どんな商品を販売しているお店でもそうですが、小売業においては商品の発注はお店の売上を左右する最重要業務だと言えます。商品の消費期限が短い食品では特に発注が重要で、さらにロスチャージがあるセブンイレブンでは発注が極めて重要になります。

コンビニの場合はある程度の売れ残りは仕方がないものとして扱い、多めに発注を行っているチェーンが多いです。売れ残りのロスチャージを増やすためではなく、ある程度多めに発注をした方が売上が増えることが多いことが経験から分かっているからです。

発注した商品が全部売れると売り切った満足感がありますが、商品が売り切れている時点で機会損失が発生しています。私は食品を担当したことはないのですが、別のカテゴリでも発注数を少なくしてしまうと売上も少なくなることが多かったです。

商品が大量に陳列されているとお客さんもその商品が人気に見えて、それじゃあ買ってみようかという気になります。商品が売れて棚の商品が減って行くにつれて、残りの商品の売れ行きも鈍るため、発注数が多いほどお店の棚が新鮮に見えます。

棚がスカスカなお店はお客さんからダメなお店だと評価されますが、競合店が多いコンビニの場合は特に影響が大きいです。代替えとなるコンビニが近くにあることが多いため、2,3回棚がスカスカな状態が続くとすぐにお客さんに見捨てられてしまいます。

お店側はロスチャージを減らすために発注を減らしたいと考えますが、発注を減らすとお店の売上が落ちてしまうリスクが大きくなります。コンビニ側は発注を増やすようにお店を指導するのですが、マーケティングの面だけを見るとこれは順当なことです。

商品を売り切るために値下げ販売をすると収益性が悪化する

食品の値下げ販売と言えば食品スーパーがよく知られていて、値下げ品を狙って買い物にやって来るお客さんもいます。値下げ販売をすると食品スーパーの利益率は悪化してしまいますが、廃棄をするよりは少しでも利益を確保した方がいいとする考え方です。

値下げの時間を狙ってお客さんが来るのではという不安もありますが、実際には狙って値下げ商品を買うのは簡単ではありません。食品スーパーは自宅や会社から遠くにあることが多いので行くこと自体が面倒ですし、狙って買おうとしても買えないことが増えれば、お客さんも積極的に値下げ品を狙おうとはしなくなります。

しかし、コンビニが食品スーパーのように値下げをやろうとすると、こちらはお客さんから狙い撃ちにされる可能性があります。食品スーパーと比較するとコンビニは商圏が狭く、お店の近くで行動しているお客さんが買い物にやって来ています。

家の近くにある、会社の横にあるなどアクセスがしやすいので、値下げ販売をすると分かればお客さんも値下げを意識します。食品スーパーとは比較にならないくらいお客さんからのプレッシャーは強く、お店の収益性が悪化するのは確実です。

現在、コンビニは小売業の中でも業績が好調な業種の一つですが、成功の要因の一つは安売りをやらなかったことです。「便利に買い物ができる」という強みを持つことで、お客さんに食品スーパーや総合スーパーよりも高いお金をもらって来ました。

これまでコンビニ業界全体で高い価格での販売を維持して来ましたが、これを値下げによって壊してしまうのはもったいないです。食品を無駄にすることはもったいないことですが、企業の利益を増やすためには値下げよりも廃棄の方が好ましいです。

発注を減らしたり値下げ販売をするとコンビニの強みがなくなる

コンビニとフランチャイズのキーワードで検索をすると、コンビニのフランチャイズがいかに危ないかの記事が出てきます。夫婦で寝る時間がないくらい働いても低収入で、契約期間も長く儲からなくてもやめることができないというような話があります。

10年くらい前からこうした情報はあったのですが、最近は情報の量も増えて多くの人にも知られるようになっています。情報は事実であると考えているのですが、果たしてこうしたお店は全体のどれくらいの割合なのかは気になるところです。

フランチャイズビジネスの契約では守秘義務がありますから、ビジネスに関する情報が外に出てくることはほとんどありません。また、成功している人ほどそのノウハウを守ろうとしますから、コンビニでこんなに儲かってるというような情報はありません。

コンビニのフランチャイズで苦労している人がいる一方、コンビニの店舗は増え続けていて、新規のオーナーも確保できていることになります。コンビニで買い物をするとオーナーを見かけますが、幸せそうな人もいますし、疲れ切った顔をしている人もいます。

コンビニのオーナーの利益が大事なことはそうですが、それでも値下げ販売はやらない方がいいと考えています。多くの小売業は薄利多売で規模を拡大するのですが、コンビニはこれまでの経営努力で高価格での販売を維持したまま拡大できています。

これからもプライベートブランドの拡大が見込まれていて、さらに高い商品を販売することで大きな利益を狙っています。コンビニ全体で値下げ販売が増えれば商品の価格が下がり、牛丼業界のように売れども売れども儲からないビジネスになってしまいます。