セブンイレブンの成長戦略から小売業全体の方向性を考える

セブンイレブンの成長戦略から小売業全体の方向性を考える

セブンイレブン会長のインタビュー記事があって、セブンイレブンのこれからについての話があります。高齢化社会の到来、ネットショップの脅威など、小売業を取り巻く環境には重要な変化があり、これに対応する形で小売業にも変化が必要になります。

セブンイレブンは日本で一番成功している小売業だと言えますが、他の小売業もセブンイレブンの戦略から学ぶことができます。多くの小売業が似たような商品を似たような売り方で売るようになるため、競争が激化することになるのではないかと思っています。

お客さんの変化に対応することでお店も成長して業績を伸ばせる

昔のコンビニは今のようにプライベートブランドは多くはなく、主にナショナルブランドの商品を買うお店でした。総合スーパーや食品スーパーよりも価格が高いのですが、お店が好立地にあるので、遠くまで買い物に行きたくないお客さんがコンビニを利用しました。

品揃えは少なく価格は高く、小売業の常識からするとダメなお店ですが、「買い物のしやすさ」を武器にお客さんの支持を得ました。今から振り返ると、買い物のしやすさにこれほどの価値があるのは驚きで、お客さんのニーズを鋭く見抜いていたことになります。

現在、コンビニの食品が人気で注目が高まっていますが、これもお客さんの変化だと見ることができます。これまではスーパーで食品を買うことが当たり前でしたが、様々な理由から、コンビニで食品を買いたいと考えるお客さんが増えています。

価格に敏感ではない単身世帯が増える、買い物範囲が狭い高齢者が増えるなど、近所のお店で楽に食品を買いたいニーズが拡大しています。このお客さんのニーズに合わせて食品の品質を高めることで、食品スーパーからお客さんを奪うことに成功しています。

コンビニは飽和状態で出店の余地が少ないと言われていますが、今後数年でいよいよ本当に難しくなるのではないかと思います。これからは既存店の売上を高めていくことに主眼が置かれますが、お客さんの変化に対応することが成功の近道です。

コンビニ同様に好調なのがドラッグストアですが、生活用品だけでなく食品など品揃えがどんどん拡大しています。小売業の仕事はお客さんが必要としている商品を売ることであり、お客さんが何を必要としているのかこれまで以上に研究する必要があります。

お客さんの買い物範囲が狭くなり新しい販売方法が必要になる

お客さんの買い物範囲が狭くなりショッピングセンターの需要がなくなるとありますが、これは今後10年くらいで意識できるようになると思います。若者の自動車離れに加え、高齢者も運転しなくなりますし、さらに高齢者には体力的な不安もあります。

結婚しない若者が増えれば家具・家電などのニーズも縮小するため、若者の買い物範囲はますます狭くなります。ここ15年くらいは郊外への出店が小売業の基本戦略でしたが、買い物範囲の縮小が見込まれることで出店にも影響が出てきます。

コンビニはお客さんの自宅に商品を届ける御用聞きサービスを行っていますが、これは小売業全体に影響を与えると考えています。コンビニは昔はそっけない接客でしたが、最近は地域密着に力を入れていてお客さんとの会話も増えています。

今のところはコンビニに売っている商品を届けるだけですが、将来的にはありとあらゆる商品を販売する機会を掴めます。御用聞きから家具、家電、衣料品などを販売するようになれば、これらの商品を販売する他の小売業にも影響が出てきます。

高齢者が買い物にやって来なくなるリスクを考慮すると、小売業にはネットショップの運営、宅配など新しい販売方法が必要になります。小売業には新しい投資が必要になりますが、体力がなくなった高齢者の買い物が大変になることは確実です。

例えば、宅配を始めている食品スーパーがありますが、うまく行けば食品だけではなく、日用品、雑貨なども販売して単価が伸ばせます。宅配は費用負担が大きいのですが、やらなければやる企業にお客さんを囲い込まれてしまうリスクがあります。

新商品を開発し続けることができるだけの総合力が必要になる

セブンイレブンをはじめコンビニ各社は毎週新商品を開発して、お客さんに飽きられないようにしています。個人的にはお客さんに飽きられないにするためというよりは、コンビニ各社の開発競争が過熱しすぎているという感じです。

新商品を絶えず開発することでお客さんの気を引けますし、競合他社へプレッシャーを掛けることもできます。以前は小売業にとって新商品の開発はそれほど重要なものではありませんでしたが、今ではインターネットで毎日新商品の状況がやりとりされるため、新商品を次々に出さなければお客さんに忘れられてしまいます。

新商品の開発が重要になっている理由の一つは、業種を越えて商品を真似することが増えたからです。例えば、ユニクロのヒートテックは独自性の高い商品でしたが、総合スーパーやディスカウントストアでも似たような品質の商品が買えます。

後続企業の商品の品質が高まって来ると、価格が安いからもうこっちでいいかなと考えるお客さんも出てきます。次々に新商品を出さなければ競合企業に真似されてしまい、あっという間に高く売れない低収益の商品になってしまいます。

小売業はもともとメーカーの商品を仕入れて売ることが中心でしたが、最近はプライベートブランドの拡大が重要になっています。情報化社会になって商品の価格比較が簡単にできるので、どこででも買えるメーカー品は高い価格で売れなくなっています。

商品を高く売って大きな利益を確保するためには、自社のブランドで独自性のある商品が不可欠になっています。オリジナル商品を持っていないメーカー品中心の小売業は、Amazonなどの巨大ネットショップに売上を奪われてしまいます。

ネットショップとの競争では実店舗があることが強みになる

幅広い商品を扱っているAmazonは小売業全体のライバルで、すべての小売業が意識しなければならない存在です。2013年の日本での売上は約7,300億円と小売業全体から見ると小さいですが、家電などすでに価格競争力を持っているカテゴリもあります。

Amazonはこれからも順調に規模を拡大して行きますから、将来的に果たしてどれくらいの安売りができるのかという感じです。全体的に見るとまだAmazonの価格は高いですが、規模が拡大するのに合わせて商品の価格が下がって来ることになります。

ネットショップの弱点はお客さんと物理的に接触できないことで、実店舗はこの弱点を突くことで優位に立ちたいです。実店舗と自社のネットショップを活用することで、ネットショップ専業企業にはできない付加価値を生み出します。

例えば、ネットショップの商品の返品は面倒くさいですが、実店舗があれば実店舗でも返品を受け付けることができます。ネットショップの使い方自体が分からない高齢者にも、実店舗で店員が丁寧に買い物の仕方を説明することができます。

実店舗とネットショップを統合したオムニチャネルは、規模や業種に関係なく小売業にとって重要なものになると考えています。「便利な買い物」がこれからの日本社会では重要になるため、買い物のしやすいお店にお客さんが集まります。

特にネットショップには商圏がないため、Amazonのような一部の企業に日本全国から注文が集まることになります。ネットショップを持っていないということは、常に他のネットショップにお客さんを奪われるリスクになります。