アルバイト不足で低価格飲食チェーン店のビジネスモデルが崩れる

アルバイト不足で低価格飲食チェーン店のビジネスモデルが崩れる

アルバイトの採用が難しくなることはすべての産業にとって問題ですが、特に低価格の飲食チェーン店への影響は大きいです。飲食業は全体的に見れば低収益の産業ですから、他の産業と比較してアルバイトに高い賃金を出すことができません。

また、最初から低賃金のアルバイトに依存しているところも多く、賃金の上昇を受け入れられる仕組みになっていません。低価格チェーン店離れの動きがある中で人件費の上昇が起こっており、利益を確保することがますます難しくなっています。

アルバイトの採用では好待遇が出せない飲食業は苦戦する

アルバイトの採用が難しいことは少し前から言われ始めましたが、関連したニュース記事も増えているような感じです。外国人観光客の増加の話でも感じるのですが、こうした変化はジワジワと来るというよりは、ある時点で一気に過熱するような印象があります。

アルバイトの採用が難しいとみんなが言い始めたことで、それぞれの企業が早く人材を確保しようと一斉に動き出すので動きが加速します。若年層の人口が少ないことは揺るぎない事実ですから、アルバイトの確保はこれから長い間経営課題になりそうです。

小売業では大手企業のファーストリテイリングやIKEAは非正規社員の正社員化を行っていて、賃金などの待遇を改善することを発表しました。利益率の高い一部の製造小売業では、人件費の上昇を難なく受け入れることができる財政面での余裕があります。

仕事内容が変わらないにも関わらず賃金が上がるということは、小売業の非正規社員が今まで買い叩かれて来たということです。小売業が低賃金の労働者に依存したビジネスであることは仕方がないことですから、待遇が改善されることは前向きに考えるべきかもしれません。

小売業では一部の企業には人件費を上げられる余裕があるのですが、飲食業の場合は総じて余裕がありません。特に低価格のチェーン店の場合はローコストオペレーションが徹底しているため、人件費が低いことを前提にして利益が計算されています。

アルバイト確保のライバルは小売業だけではなく、運送業、サービス業などすべての産業と賃金で競わなければなりません。飲食業の賃金水準はおそらく全産業の中でも下位の方ですから、アルバイトを確保するのは本当に難しいことだと思います。

店舗あたりの売上には限界があり人件費の上昇を吸収できない

小売業、飲食業の両方に当てはまることですが、お店の売上はお店の面積に依存していて、お店の面積以上の売上を作ることは不可能です。小売業の場合は売り場面積が重要で、売り場が大きければ大きいほど多くの商品が並べられるので売上が伸びます。

飲食業の場合は座席の数が重要で、座席が多ければ多いほど、多くのお客さんに利用してもらうことができるので売上が伸びます。お店の面積はお店ができたときに決まるので、その瞬間にそのお店がどれくらい売れるのかということもある程度決まります。

小売業の売上の上限は売り場面積に依存しますが、売り場に並べる商品を入れ替えることで売上を伸ばす余地があります。実際に売上を増やすことは難しいことではあるのですが、品揃えや価格を変えることにより、売上を伸ばすチャンスがあります。

一方、小売業と比較すると飲食業の場合は売上を伸ばす余地が小さく、品揃えや価格を頻繁に変更することは難しいです。飲食業の場合は座席回転率を高めることを目標とすることが多く、調理時間、お客さんの食事時間を短縮することに力を入れています。

飲食店の場合、お客さんが増えれば増えるほど嬉しいかというとそうではなく、多くのお客さんに対応することは大変な作業です。一時期、大幅な割引のクーポンサイトが流行りましたが、大量のお客さんに対応できずに混乱した飲食店が多数出ました。

調理場の面積、座席数にはこなせるお客さんの上限があり、お客さんが増え過ぎると十分なサービスを提供することはできません。人件費が増えるので売上を伸ばさなければいけませんが、お店のキャパシティー以上に売上を伸ばすことは不可能です。

飲食店を利用することが単なる消費から体験に変化している

近年、飲食チェーン店の不調の代表的なものとして、牛丼、ハンバーガーなどの低価格ファーストフード店が話題になります。2000年代以降は牛丼やハンバーガーなどの低価格商品が人気になっていて、お客さんもリピーターになり何度も利用していました。

マクドナルドの過去最高益は2011年ですから、ここ数年で一気にお客さんのファーストフードに対する考え方が変わったことになります。2000年代のマクドナルドは称賛されていたのですが、それが嘘のようにお客さんから支持されなくなっています。

低価格の飲食チェーン店が敬遠されるようになった原因ですが、食べログ、ぐるなびなどの口コミサイトの成長が関係しています。お客さんはたくさんの飲食店の存在を知るようになったことで、飲食が消費ではなく体験になろうとしています。

飲食店のコンサルタントの本を読むと、「飲食は体験である、小さな飲食店は価格ではなく体験で勝負するべき」と書いてあります。インターネットで個々の飲食店の素晴らしさが知られるようになり、チェーン店から中小店への流れが生まれています。

低価格の飲食チェーン店の不調の理由の一つとして、高齢化社会の進行が関係しています。人間は歳を取るにつれて食べる量が減ってしまいますから、低価格のお店でたくさん食べるのではなく、質の高いものを少量食べようと考える人が増えるのはありそうです。

2000年代に牛丼やハンバーガーを食べていた世代も10-15歳は歳を取り、以前に比べると食べる量は減っています。若い世代の人口減少と合わせて、低価格チェーン店が苦戦するのは順当で、飲食チェーン店の失敗ではなく外部環境の変化がもたらしたものです。

売上の減少と人件費の増加で店舗フォーマットが危機を迎える

小売業でも飲食業でもチェーン店ビジネスには利益を確保する店舗フォーマットがあって、同じフォーマットのお店を大量に出店します。中にはうまく行かないお店も出てきますが、それは店舗フォーマットが悪いのではなく商圏や立地が悪いのだと考えます。

うまく行っていないお店は閉店して、別の場所に新しいお店を出すことで、企業全体で利益を確保しようとします。好調なお店が不調のお店を引っ張ればよく、好調なお店の方が多いうちは、店舗フォーマット自体が危機を迎えることはあまりありませんでした。

マクドナルドの不調は長期化しそうですが、店舗フォーマット自体を大きく変えることは難しいです。例えば、お客さんが減ったからと言ってお店を物理的に小さくすることはできず、人件費や光熱費を削ろうとするとさらに売上が下がってしまいます。

そこそこ低価格のハンバーガーのイメージでやって来ましたから、急に高級路線へと切り替えることもできません。お客さんが減る中で徐々に商品の単価を上げることになると思いますが、店舗運営の固定費が減らせないので利益の確保は大変です。

牛丼の場合はローコストオペレーションが徹底されているため、コストをさらに減らすための余地はほとんど残っていません。商品メニューは少数に絞り込まれているため、原価の低減や在庫管理も最適化されていて費用を抑える余地は小さいです。

また、すき家では1人の店員を長時間勤務させることで究極的に業務効率を高めていて、こちらも工夫の余地は小さいです。牛丼も高価格商品への移行を図っていますが、従来のローコストオペレーションと真逆のコンセプトなので先行きは不透明です。