ダイエーが総合スーパーから食品スーパーへの転向を宣言する

ダイエーが総合スーパーから食品スーパーへの転向を宣言する

ダイエーが衣食住の商品を販売する総合スーパーから脱却して、食品事業に集中したスーパーへと転向することを発表しています。総合スーパーの業績が低迷する背景には、品質、価格、品揃えに優れる専門店の台頭や便利なネットショップの登場などがあります。

また、店舗の老朽化とともにお客さんの高齢化も進んでいて、総合スーパーで買うのは食品や日用品だけになっています。食品に特化するにしても物販には限界があるため、高齢者になった既存のお客さん向けの新規事業が望まれるところです。

総合スーパーがお客さんを独占できたのは1990年代まで

1970-1980年代は今と比べてお店も少なく、個人商店、食品スーパー、総合スーパー、駅前商店街、駅前百貨店などが買い物場所でした。駅前に買い物に出るのは月に1回、数か月に1回くらいで、普段の買い物場所は個人商店、食品スーパー、総合スーパーです。

平日の食品は個人商店、食品スーパーで買い物をして、それ以外の生活用品は休日に総合スーパーで買い物をしていたような記憶があります。お客さんの買い物パターンのバリエーションは少なく、総合スーパーで衣食住の商品をまとめて買っていました。

1970年代から1980年代に子供時代を過ごした人にとっては、総合スーパーには懐かしい思い出がある人もたくさんいます。食品、日用品、家具、家電、衣料品、おもちゃ屋、本屋、ゲームセンター、飲食店など、大きな建物にたくさんのお店があります。

個人商店と比較すると商品の数は比較にならないほど多いですし、同じ場所に様々なお店があるので飽きることなくお店を見て回れます。総合スーパーファミリーにとっては単なる買い物場所だけではなく、エンターテイメント性もあるお店だったと言えます。

総合スーパーが支持されたのは1990年代までだと考えていますが、これはベビーブーム世代のライフサイクルと関係しています。統計的に見ると1970年代の前半に生まれた子供が多いため、この世代のファミリーにはまとまった需要がありました。

子供が成人する1990年代までは大きな需要が期待できるのですが、子供が成人するとお客さんの消費も一段落付くことになります。総合スーパーで何でも買い物をして来た世代の需要がなくなったことで、総合スーパーの業績が低迷する長い時代が始まります。

2000年以降は専門店の台頭に加えてネットショップも登場

専門店が台頭し始めた時期に定義はないのですが、個人的には2000年代からだと考えています。家電は家電量販店、家具はファニシングストア、生活雑貨は100円ショップ、生活用品はホームセンター、ディスカウントストア、ドラッグストア、衣料品はファッションストア、2000年くらいには既にお客さんにはこうした意識がありました。

2000年の中盤くらいになると、ユニクロ、ニトリ、ABCマート、ヤマダ電機など、各カテゴリの専門店の名前もかなり認知されました。出店コストの安い郊外に小売業の注目が集まり、様々なカテゴリのお店が出店され専門店の時代が来ました。

総合スーパーから専門店へとお客さんが流出したのですが、これに加えてネットショップの登場も脅威になっています。直接どのカテゴリを奪ったというよりは、ネットショップの買い物の利便性がお客さんに影響を与えています。

ネットショップの便利な買い物を体験したことで、古くて大きな店舗の総合スーパーでの買い物が面倒くさく感じるようになります。また、総合スーパーは品揃えの豊富さが強みでしたが、ネットショップの無制限の品揃えには太刀打ちできません。

若い世代は専門店やネットショップで買い物をすることが当たり前になり、総合スーパーで買い物をして来た中高年とは買い物習慣が異なります。若い世代に今後も買い物をしてもらえない可能性が高く、このことが総合スーパーの将来を難しくしています。

専門店には品揃え、品質、価格で負けており、ネットショップには買い物の利便性で劣っています。総合スーパーにとっては専門店だけでも十分に厳しかったのですが、ネットショップが登場したことで、いよいよ競争環境が厳しくなっています。

店舗が老朽化するとともにお客さんも高齢化して売上が伸びない

総合スーパーは小売業の中でも歴史が長いため、築20-30年といった老朽化している店舗も少なくありません。私がよく利用しているダイエーは築25年くらいなのですが、店舗の老朽化が目立つようになっていて魅力的なお店とは言えなくなっています。

3階建ての店舗の2階、3階は完全に売り場が余っていてスカスカですが、売れる商品を見つけることも難しいので仕方がないです。昔は余った売り場にはガチャガチャや自転車が置かれることが多かったですが、それも売れないのか今では何も置かなくなっています。

時間が経てば店舗は老朽化しますが、それとともに商圏のお客さんの高齢化が進行することも考慮しなければいけません。子供を育てる期間は様々な商品が必要になりますから、20-25年くらいは食品や日用品以外にもたくさんのカテゴリの商品が売れます。

しかし、子育てが終わって子供が自立してしまえば、残された高齢者夫婦に必要なのや食品や日用品が中心になります。総合スーパーと専門店のどちらで買うかという買い物場所の話をする以前に、高齢者はそもそも買い物をする商品自体が少ないです。

総合スーパーの凋落は専門店の台頭が原因とする意見が多いですが、商圏の高齢化の方のインパクトもかなり大きいです。実際、ダイエーで買い物をしていても食品売り場にはお客さんがいますが、そこから2階、3階の他の売り場へは流れて行っていません。

私が観察した限りの感想ですが、買いたいけど欲しい商品がないというよりは、最初から食品以外の売り場を意識していないような印象です。食品を買っている若いお客さんもいることはいるのですが、食品だけを買うお店として使われているような感じです。

立地の良い場所で食品と日用品を販売する小型店には需要がある

ダイエーの店舗の多くが駅から近くの好立地にあるとのことですが、立地が良いことはこれからの時代は強みになります。自動車を持たない若者の増加、体力が不安な高齢者の増加によって、お客さんの買い物範囲は全体的に狭くなって行きます。

今はまだ立地の重要性はあまり感じられませんが、あと10年もすれば明らかに業績に表れるようになると思っています。ダイエーには高齢者のお客さんが多いですが、視点を変えると、高齢になっても買い物に行ける便利な場所にあるということです。

人口が減少して行く中で小売業の将来は予測が難しいですが、食品と日用品のカテゴリはまだまだ有望だと考えています。ここ15年くらいは食品も外食も低価格が支持されて来ましたが、近年は少し値段の高いものが売れるようになっています。

消費者の生活に余裕が出てきたというよりは、これまで他の商品へ使っていたお金を食費に回しているのだと思います。食事をすることに喜びや幸せなどの新しい付加価値を見出していて、小売業には食品で売上を伸ばせるチャンスが生まれています。

1970-80年代からダイエーで買い物をし続けているお客さんはたくさんいて、年齢を重ねて60代、70代の高齢者になっています。ダイエーはこうしたお客さんからは十分に信頼されていますが、高齢者の生活に多くのものは必要なく、商品が売れずに業績が低迷しています。

売れなくなった商品を売り場から排除すると食品だけになってしまいますが、食品以外のカテゴリやサービスも充実させたいところです。高齢者に対して物販を拡大することは難しいですが、これまでのお客さんとの信頼関係を活かせる新規事業が望まれます。