小売業の外部環境が厳しくなり増収減益が目立つようになる

小売業の外部環境が厳しくなり増収減益が目立つようになる

小売業の決算書を見ていると、売上が伸びている、現状を維持しているにもかかわらず、利益が減少している企業がたまにあります。安売りをすることで売上を上向かせることはできますが、販売コストの増加や設備投資が原因で利益は減ってしまいます。

こうした動向は家電量販店で目立っていて、ネットショップとの競争が激しく、売上を維持するための安売りが収益性を悪化させています。また、安売りを強いられる中で様々な設備投資が必要になっていて、小売業の収益性はますます悪くなる方向です。

新規出店が続いているうちは多くの小売業が増収増益になる

小売業は同じタイプのお店をたくさん出店することで、売上を伸ばして利益率を高めるビジネスです。成功する小売業のベースになるのが店舗フォーマットで、優れた店舗フォーマットを持つお店は長期に渡って成功を収めることができます。

商圏の人口、売り場面積、陳列する商品、店員の数、想定するお客さんの数、想定する売上、想定する利益など、店舗のフォーマットは細かく設計されています。優れた店舗フォーマットでイメージしやすいのはコンビニで、計算されつくした店舗フォーマットになっています。

利益が十分に確保できる店舗フォーマットができれば、小売業が売上を伸ばすことはそれほど難しいことではありません。出店の余地がある限りは新しい新しいお店を作り続けることができ、新しいお店が増えた分だけ新しい売上が生まれます。

セブンイレブン、ドン・キホーテ、ニトリ、コメリなどの成功企業は、何十年以上も売上を伸ばし続けて来た実績があります。失敗する立地というものは存在していますが、成功する店舗フォーマットを持つ企業は新店も順調に行くことが多いです。

売上が増えればそれに合わせて利益も増えることが多く、増収と増益は基本的にはセットとして考えて問題はありませんでした。売上が増えた分だけ利益が増えることは順当ですが、それに加えてビジネス効率が良くなり利益率が改善されることが多いです。

効率が良くなる例えが難しいのですが、例えば料理をする場合、1人分の料理を作るよりも4人分の料理を作るほうが1人あたりの食費は小さくなることが多いです。小売業では商品の製造、商品の仕入れ、商品の運搬などにおいては、商品の数が多くなればなるほど効率が良くなる部分があり収益性が高まることが多いです。

店舗数が増えなくなると既存店の落ち込みをカバーできない

新規出店したお店は1年後からは既存店と呼ばれるようになり、売上を分析する場合は新店と既存店は区別されます。私もたくさんのデータを見たわけではないのですが、経験的には既存店の売上は開店後3-5年は伸び、その後、店舗の老朽化、競合店の出店などが要因で、時間経過とともにじりじりと減ることが多いです。

時間が経つにつれて店舗が老朽化したり、新しい競合のお店が増えたりして、商圏内でのパワーが落ちてしまうからです。一部の好調な小売業では既存店が伸びることがあるのですが、基本的には既存店の売上は落ちて行くものと考えてよいです。

小売業では既存店の売上はいずれ落ちるものとして考えて、新規出店によって全体の売上を伸ばすことが基本戦略でした。既存店の売上が数パーセント落ちたとしても、新しいお店の売上が新規に生まれるので、合計すると前年比をクリアすることができます。

既存店の改善よりも新規出店の方が簡単に大きな売上が作れるため、多くの小売業は新規出店の方へ力を入れることになります。既存店は既存店で前年比をクリアする努力をしますが、新規出店がうまく行っているうちは既存店の落ち込みは大きな問題にはなりませんでした。

現在は出店余地の減少、ネットショップの台頭、業種間での競争の激化などにより、閉店数も増えるので合計の店舗数の増加が停滞しています。これまでは全体の伸びを新規出店に依存して来たため、新規出店が難しくなると一気に停滞感が強まります。

総合スーパーや家電量販店では新規出店が難しくなっているのですが、売上を伸ばして収益性を改善する方法が見つかりません。どうにかして既存店を伸ばそうと工夫をするのですが、時間経過とともに老朽化して行く既存店を伸ばすことは難しい作業です。

安売りをすることで売上は増えるものの利益は減ってしまう

小売業の決算書を見ていると、売上が伸びている、現状を維持しているにもかかわらず、利益が減っている企業がたまにあります。これまでは売上が伸びれば利益も一緒に伸びることが多かったので、増収減益の企業が見られるようになったのは変化です。

新規出店が難しくなれば売上も利益も一緒に減りそうですが、売上は健闘する中で利益が減るのは従来とは異なっています。こうした状況を引き起こしている要因は安売りだと考えていて、安売り競争が激しくなるにつれて増収減益の企業が増えて来るのではないかと思います。

少し前にヤマダ電機の決算書で目にしたのですが、ネットショップに価格を合わせることで収益性が悪化したとありました。ネットショップより価格が高いと買ってもらえない可能性が高いですから、ネットショップの価格に合わせようとします。

価格を下げることによって何とか売上を確保できますが、安売りをした分だけ以前と比較すると利益率は悪化します。まったく売れないよりは値下げをしてでも売れた方がいいので、利益率が悪化するとしても、値下げを選択するのは仕方がない判断です。

価格を下げると客数と販売数量が増えることが多いのですが、店員の作業量も増えるので販売コストは大きくなります。価格を下げることにより確実に粗利益は減りますが、それに加えて販売コストも増えるので、考えている以上に利益が減ってしまいます。

競合企業、ネットショップとの競争が今後も続くため、商品の価格はこれからも下がり続けるのではないかと思います。価格を下げてもお客さんが増えない状況に陥るといよいよ困難になるため、どこかで価格競争から抜け出さなければなりません。

業界内では投資ができる企業とできない企業の差が大きくなる

小売業では競争が激しくなる中で安売りが避けられなくなる一方、テクノロジー、物流、プライベートブランドへの投資負担も大きくなっています。積極的に投資が行える企業のお店にお客さんが集まり、投資を行えない企業のお店にはお客さんがやって来なくなります。

少し前は百貨店や家電量販店で業界再編が行われましたが、最近はスーパーやコンビニで経営統合の話が活発になっています。コンビニは小売業の中では好調な業界ではありますが、業界下位の相対的に規模の小さな企業は利益を出すことが難しくなっています。

業界の中でも伸びる企業と伸びない企業の差が出てきていて、業界全体で揃って成長するようなことは望めません。例えば、家電業界はネットショップに押されて全体的に低調ですが、積極的に投資を行うヨドバシカメラはお客さんの支持が強いです。

ヨドバシカメラはネットショップの取り扱い商品の拡大、当日配達エリアの拡大など、買い物の利便性向上のため積極的に投資を行っています。家電量販店では商品での差別化が難しいため、品揃え、買い物のしやすさが主な差別化ポイントになります。

世の中に似たような商品があふれている中で、自社のプライベートブランドの充実が小売業全体で共通の目標になっています。プライベートブランドの開発、販売は売れなかった時の損失もあるため、ハイリスク、ハイリターンの投資になります。

ネットショップで購入した商品の店頭受け取り、当日配達サービスは、忙しくて買い物に時間を掛けたくないお客さんから求められるようになっているサービスです。お店の数を増やすことが難しくなった業界では、商品開発やサービスへの投資競争が激しくなり、収益を圧迫する要因になります。