イオンは小売業で稼げなくなってもサービス業で稼ぐことができる

イオンは小売業で稼げなくなってもサービス業で稼ぐことができる

イオンの業績が低迷しているというニュースが多いのですが、これから業績を伸ばすチャンスは大いにあります。郊外にある大型店の立地は高齢化社会が進む中で集客面で不安材料ではありますが、店舗の運営効率を高めるなど、費用面での改善の余地はあります。

イオンはこれまで培ってきた小売業としての信頼をベースに、物販ではなく金融などの新しいサービスを拡大することができるはずです。小売業の収益が大きく改善することは望めそうにありませんから、物販から脱却してサービス業へとシフトして行きそうです。

ネットショップや専門店の影響で小売事業は苦戦が続く

イオンの小売業には自社で商品を仕入れて販売するものと、他社のテナントを集めてショッピングモールを運営するものがあります。他社から賃料をもらうショッピングモール事業は好調ですが、自社で商品を仕入れて売る小売事業では苦戦が続いています。

ショッピングモールのテナントを入れ替えることは簡単ですが、自社で魅力的な商品を提供し続けることは難しいです。総合スーパーは品揃えが豊富なことが強みでしたが、食品以外のカテゴリでは専門店に劣るようになり、徐々にお客さんを失っています。

衣料品、雑貨、家電などの専門店が登場する以前は、お客さんは総合スーパーでこれらの商品を買っていました。しかし、各カテゴリに低価格で品質が良い商品を提供する専門店が登場すると、総合スーパーは劣勢に立たされることになりました。

最近ではここに利便性と品揃えの豊富さが強みのネットショップも加わったことで、総合スーパーの存在感は一層小さくなってしまいました。これは総合スーパーの努力不足だと考えるよりも、小売業のあり方が大きく変化したと見るべきです。

総合スーパーは衣食住の商品を一つのお店で買えることが強みですが、そのライフサイクルは20-25年くらいで終了します。子供が成人になるまでは多くの商品が必要になりますが、子供が成人して高齢者夫婦だけになれば、商品の需要もなくなってしまいます。

商圏がうまいこと若返ってくれることも期待できず、出店から20年も経てば、商圏内のお客さんは50代、60代の方が多くなります。年齢の高いお客さんの買い物は食品と日用品が中心になるため、規模の大きな総合スーパーは売り場を持て余すようになり、苦戦するのは順当だと言えます。

小売事業にはお客さんとの関係を維持する十分な効果がある

総合スーパーの食品以外の商品が売れにくくなっていて、利益率も低くなっていることは良いことではありません。苦戦が続いている中でもお客さんや外部環境は変化していますが、私は総合スーパーの現状は悪くはないと考えています。

イオンの場合はグループ全体で売上高が7兆円近くもあって、利益率が低くなっているとしても売上高は巨大です。小売業にとって一番怖いのは商品が売れなくなることですが、巨大な売上高を持っている事実はお店がお客さんから信頼されている証です。

総合スーパーのイオン、ダイエー、イトーヨーカドーは苦戦していますが、お客さんからの信頼が厚い企業でもあります。総合スーパーの全盛期に買い物をしていた若い世代は、60-70代になった今でも総合スーパーで買い物をしています。

総合スーパーの全盛期だった1970-80年代に幼少期を過ごした人たちは、現在30-40代の社会の中心の世代になっています。総合スーパーの商品が価格や品質で専門店に劣るとしても、総合スーパーのお店そのものが信頼されていないわけではありません。

イオングループ全体の営業利益の中で金融事業の割合が大きくなっていて、クレジットカードや銀行業務で利益を稼いでいます。お客さんがイオンのクレジットカードや銀行を利用するのも、これまで培ってきた小売業としての信頼があるからです。

小売業でお客さんを集めて金融事業で稼ぐことは成功パターンで、今後もこれまで培った信頼をベースにした新事業には期待ができます。小売事業単独の収益性が悪くなっているとしても、お客さんとの関係を維持し続けるという別の重要な役割を担っています。

実店舗を各種サービスへ誘導するポータルとして活用できる

イオンは小売業として商品を売るだけではなく、新しいサービスも始めていて、「イオンのお葬式」という葬儀のサービスを行っています。葬儀は何回も主催するものではなく、相場も分からないので、お客さんにとっては利用が難しいサービスです。

お客さんは信頼ができるサービス提供者を必要としているのですが、小売業として信頼されているイオンは最適な事業者です。お客さんが買い物が難しい商品・サービスほどチャンスがあり、イオンのブランドがお客さんを安心させる効果があります。

インターネットではポータルサイトのYahoo、価格比較サイトの価格.comが人気になっていて、商品やサービスを購入する導線として支持されています。Yahooと価格.comは商品も実店舗も持っていませんし、お客さんと対面で接触することもないのですが、お客さんはYahooと価格.comの情報を信頼しています。

イオンもYahhooや価格.comのような買い物のアドバイザー的な役割を果たすことが可能で、実店舗とこれまでの小売業の実績は強みです。実店舗で売れなくなった商品は販売することをやめて、お客さんに商品の情報提供をするようにすればよいです。

ネットショップでの商品の販売にもチャンスがあり、お客さんと対面で接触できる実店舗があることは強みになります。Amazonや楽天は順調に業績を伸ばしていますが、お客さんは自分から積極的にネットショップを使う人たちです。

Amazonや楽天は新規のお客さんに働きかけることが難しく、ネットショップに興味がない人、使い方が分からない人を取り込むことができません。一方、イオンは対面でお客さんに説明することができるため、ネットショップにお客さんを誘導できます。

買い物体験を改良することで訪問する価値のあるお店になれる

歴史が長い大型の小売業ほど環境の変化に対応することが難しいため、イオンの総合スーパーが苦戦していることは順当なことです。これは小売業だけの話ではなく、サービス業や製造業においても歴史の古い企業が変化に対応できず苦戦するケースは多いです。

後ろから追いかける新しい企業の方が勢いがあり、古い企業は後ろからやって来る新しい企業の勢い、若さ、コスト、アイデアに勝つことは難しいです。安売りで勝つことは難しくなって来ますが、商品の品質、買い物のしやすさ、親しみやすさ、長年蓄積された信頼など、他にアピールする点は十分にあります。

高齢化社会が進む中で唯一期待できるカテゴリは食品だとされていて、高価格の食品が売れているとの報告が既にあります。しかし、イオンのプライベートブランドのトップバリュは安物だとお客さんに認識されていて、高価格のトレンドと正反対の方向へ向かっています。

イオンは食品の販売で長い実績があるにもかかわらず、お客さんにこのような評価をされてしまうのはもったいないことです。ある程度の価格の安さとお買い得感は欲しいのですが、もう少し高品質をアピールするような商品もあった方が良いかもしれません。

現在、ネットショップで注文した商品を店頭で受け取る、新しい買い物方法に注目が集まっています。食品の買い物場所として来店してもらい、ネットショップの商品を受け取ってもらうことで客単価が伸びることが期待できます。

また、総合スーパーには売り場が余っていますから、学校、病院、保険の窓口、保育園、不動産仲介など、物販以外のサービスの提供も可能です。単に買い物をするだけの場所ではなく、生活全般のサービスを統合することでお店としての価値を高められます。