小売業の外部環境は厳しく利益率が悪化することは避けられない

小売業の外部環境は厳しく利益率が悪化することは避けられない

小売業の競争環境は年々厳しくなっているように感じるのですが、小売業の収益性を悪化させる問題をいくつか考えてみました。インターネットが登場したことで多くの不利益が発生していて、何もしなくてもお客さんがお店にやって来てくれていた時代を懐かしく思います。

商品価格の下落、仕入原価の上昇、販売管理費の上昇など、収益性の悪化が進むのではないかと予想しています。ネットショップとお客さんはすごい勢いで前進を続ける中で、これに付いて行けない古い時代の小売業が脱落していくことになりそうです。

店舗数を増やすことが難しくなりカテゴリの拡大が行われる

上場企業の決算書を見ていると、新規出店で店舗数を増やすことが難しくなっていて、戦略の転換が必要になる企業もありそうです。これまでは個人商店や中小企業を潰しながら大企業が成長して来ましたが、大企業もいよいよ出店が難しくなって来たようです。

コンビニや衣料品は飽和状態がよく言われているのですが、新商品を開発して新しいマーケットを生み出し、お店の数を増やしています。新しいマーケットを生み出せる企業は新規出店が可能ですが、それが難しい企業は停滞せざるを得ない状況です。

新規出店が難しくなった時代の新しい戦略ですが、品揃えを拡大することによって客単価を増やす方向性がうまく行きそうです。現在、お店で買い物をしてくれている既存のお客さんに対して、新しい商品を販売するやり方は成功する可能性が高いです。

ドン・キホーテ、ヨドバシカメラ、無印良品などはファンがいる人気のお店ですが、品揃えが豊富なことは共通する特徴です。お客さんの方にも一つのお店で多くの商品を買いたいニーズがあり、小売業にとってはカテゴリを拡大するチャンスです。

これまでは、家電量販店、家具店、雑貨店など、ある程度取り扱いカテゴリを限定して商品を販売することが主流でした。販売する商品のカテゴリを限定することがそのお店の専門性を高め、お客さんからの信頼を得られると考えられて来たからです。

しかし、現在では商品の機能は開発され尽くした感じで、どこのお店でどこのメーカーのものを買ってもそこそこの品質が得られます。各企業がカテゴリを拡大する中で競合部分が増えることになり、結果として価格競争が厳しくなることが予想されます。

ネットショップの台頭で低価格競争がさらに加速する

ネットショップの流通総額は毎年成長していて、現在の流通全体に占める割合は3-4%程度になっています。従来の小売業からするとネットショップは異質なもので、それがどのような影響を与えるのかよく分かっていませんでした。

最近になってAmazonの存在が大きくなって、実店舗の家電や書籍に影響が出始めたことで、小売業も危機感を持つに至りました。ヤマダ電機の過去最高益は2011年となっていますから、ネットショップの影響が出始めたのは本当に最近のことです。

ネットショップが従来の小売業にもたらす脅威の一つは、ネットショップの価格が小売業全体の基準価格となってしまうことです。家電の価格は価格.comにまとめられていて、実店舗はこの価格に合わせなければ商品を売ることが難しくなっています。

ネットショップ同士で激しい価格競争をするのですが、その激しい競争に実店舗側も合わせなければならなくなります。どこのお店でも買うことができるメーカー品については、値下げ圧力が強まり、これからどんどん価格が下がると予想しています。

小売業で長く働いている人にとっては、ネットショップの存在は不愉快なものです。昔は何もしなくてもお客さんが買い物をしてくれたのですが、ネットショップが登場したことで小売業のビジネスは一気に厳しくなり、ネットショップに売上が流出する一方です。

ネットショップに売上を取られる「負け」はほとんど確定していて、その被害をどれだけ減らすかということ負け戦になっています。家電量販店や書店の苦戦を見ても対応することは難しく、そこで働く人たちの士気も下がっているのではないかと思います。

メーカーはネットを通じて独自にお客さんと接するようになる

小売業の多くはメーカーから商品を仕入れて販売しており、メーカーとお客さんを繋げる役割を担って来ました。メーカーは消費者と接触することが難しく、消費者と接することができるのは小売業だけであり、このことが小売業の強みの一つだとされてきました。

メーカーは商品がお客さんにどう評価されているのか分かりませんから、店舗に社員を行かせて店員から情報を仕入れます。小売業はメーカーに情報を教えてやる、メーカーは小売業から情報を教えてもらうという、メーカーにとっては好ましくない関係でした。

インターネットが登場したことでメーカーは独自に情報を発信して、お客さんとの接点を増やそうとしています。インターネット登場以前と比較するとメーカーの知名度が格段に高まっていて、小売業の仲介者としての役割が小さくなっています。

昔のお客さんはメーカーや商品の情報がなかったため、店員から「このメーカーはお勧めです」と言われると、そのまま商品を買っていました。しかし、今のお客さんはメーカーと商品の情報を持っていて、お店に出かけて自分で商品を買うことができます。

メーカーが自社でネットショップを運営して、直接お客さんに売ろうとする動きも出てきています。これまでは実店舗が唯一の販路でしたが、メーカーが自社で販路を持つことが不通になれば、小売業とメーカーの関係も変わって来ることになります。

ネットショップの流通総額が拡大するにつれて実店舗の影響力が小さくなり、商品を安く仕入れることが難しくなると考えています。食品や日用品などの低単価の商品はあまり影響がありませんが、高価格の商品、専門性の高い商品はどうなるか心配です。

お客さんの要求が多くなりサービス関連の投資が増える

ネットショップは様々な商品を自宅に配達してくれる便利なもので、多くの人がネットショッピングの便利な買い物体験を経験しています。Amazonは取扱いカテゴリを常に拡大していて、一度に買える商品が増えてますます便利になっています。

また、当日配達、時間指定、店頭受け取り、送料無料など、お客さんが買い物がしやすい環境が整備されています。お客さんがネットショップの利便性に慣れ親しんでしまうと、実店舗での買い物においても、お客さんの期待値が高くなってしまいます。

ネットショップが当日配達をするのであれば、実店舗もお客さんを奪われないようにするため当日配達をやらざるを得なくなります。ネットショップとの競争が厳しい家電量販店では、ネットショップに合わせるように納期が早くなっています。

これまではお店側の都合で配達計画を作っていましたが、これからはお客さんの都合に合わせなければいけなくなります。配達のためにトラックや人員を増やさなければいけなくなれば、今まで以上に売上を増やさなければ収益性が悪化してしまいます。

サービス競争ではネットショップが主導権を握っていて、実店舗はそれを見ながら追いかけて行く形になっています。ネットショップが何か便利なサービスを開発すれば、実店舗もそれに負けないように付いていかなければお客さんを失ってしまいます。

以前であれば在庫がなければ入荷を待ってもらえましたが、今ではネットショップで購入されてしまう可能性もあります。ネットショップからお客さんを奪い返すには次々に投資が必要になり、人件費を含めた販売管理費の増加は避けられません。