イオンの大型ショッピングモールは今後もお客さん呼び込めるのか

イオンの大型ショッピングモールは今後もお客さん呼び込めるのか

イオンの第1四半期の決算書を見ていたのですが、モール事業の利益が物販事業の利益より大きくなっています。物販事業が低収益な中、モール事業が好調なのは良いことですが、小売業を取り巻く外部環境を考慮すると、ショッピングモールの将来は先行不透明な状況です。

高齢化社会が進めばお客さんの行動範囲は狭くなり、郊外のショッピングモールまで出かけることが大変になります。また、ネットショッピングの品揃えが増え、多くの商品が買えるようになれば、時間を掛けてショッピングモールに来店してもらうことも難しくなります。

商品を自社で仕入れて販売するスーパーマーケット事業は低収益

イオンの決算書では物販事業はGMSとSMの2つに分かれていて、総合スーパーと食品スーパーになります。売上高は2つの事業合計で1,008,368百万円、セグメント利益は4,334百万円となっていて、利益率は約0.43%と低収益です。

GMS事業単体の売上高636,506百万円、セグメント利益3,520百万円、利益率は0.55%となっています。SM事業単体の売上高は371,862百万円、セグメント利益は814百万円、利益率は0.22%となっていて、食品スーパー単体ではさらに低収益になっています。

総合スーパー事業が苦戦する要因はいくつかありますが、お客さんが専門店で買い物をするようになったことが大きいです。家具、家電、生活雑貨、日用品など、それぞれのカテゴリに強力な専門店が存在していて、総合スーパーからお客さんを奪っています。

特定のカテゴリに特化した専門店の商品は強力で、総合スーパーは品質と価格の両面で対抗することがますます難しくなっています。総合スーパー事業は長期に渡って苦戦する状況が続いていて、現状を打開する方法が見つけられずに低迷しています。

食品スーパー事業の利益率は総合スーパーよりもさらに低くなっていて、利益率は0.22%とほとんど利益がない状態です。食品スーパー事業が苦戦する原因ですが、コンビニやドラッグストアでで食品を買う人が増えているとの話があります。

単身世帯が増えていますが、単身者は買い物をする量も少ないですから、食品スーパーではなくコンビニで買う人が増えても不思議ではありません。コンビニの商品は単価が高い一方で、食品スーパーの商品が安物だと見られてしまうと、高価格で売ることが難しくなります。

モールを運営するディベロッパー事業の利益はスーパーよりも多い

ショッピングモールを建設、運営するディベロッパー事業は好調で、セグメント利益は8,490百万円となっています。総合スーパー事業、食品スーパー事業を合わせたセグメント利益は4,334百万円ですから、ディベロッパー事業は約2倍の利益があります。

ショッピングモール事業は自社で商品を販売するわけではなく、テナントである入居企業からの手数料が売上になります。自社の物販よりもモール運営の方が利益が大きいことは、イオンの小売業としてのビジネスが転換期を迎えていると言えると思います。

物販事業とモール事業の異なる点は、自社で商品を用意するか、良い商品を持っている専門店を誘致して代わりに商品を売ってもらうかです。イオンは自社の商品では利益を稼げていないのですが、他社の商品を持って来ればテナント料を稼ぐことができています。

イオンの商品は競合他社と比較して平凡なため、安い価格でしか販売できずに低収益になっていると考えることができます。例えば、イオンのプライベートブランドのトップバリュがありますが、ネット上の評判を見ると高く評価されているとは言い難いです。

自社で様々なカテゴリの商品を用意しようとしても、すべてのカテゴリで魅力的な商品を用意することは難しいです。ユニクロ、ABCマート、ニトリ、無印良品、ダイソー、これらの専門店とすべてのカテゴリで戦うことは現実的ではありません。

自社の経営資源と他社の経営資源を有効活用したモール事業が、今後のイオンの中核になるのではないかと思っています。ただ、大型ショッピングモールが今後も安泰かと言えば、高齢化社会と買い物に体力がいる大型店は相性が悪いです。

高齢化社会が進めばお客さんは大型モールでの買い物が大変になる

大型ショッピングモールの一つ目の不安点は、高齢化社会が進むことによるお客さんの買い物活動の変化です。歳を取れば体力的に遠くに買い物に出かけることが難しくなりますから、高齢のお客さんは自宅の近くで買い物をしようとします。

ショッピングモールは住宅地から離れた郊外にあることが多く、お客さんが自動車でやって来ることを想定しています。高齢になって体力が落ちたお客さんが時間を掛けて車を運転して、わざわざ郊外のショッピングモールまで買い物に来てくれるか不安な点です。

また、ショッピングモール自体のハードとしての特徴も、お客さんが買い物がしにくい要素が揃っています。モール周辺は渋滞しますし、駐車場に止めてから入口までは距離がありますし、さらに広い店内で商品を探すことにも体力を使います。

例えば、コンビニは気軽に買い物をすることができますが、立地的な近さだけではなくハード的にも買い物がしやすいです。お店は狭いですし、レジが混雑することもありませんから、食品スーパーではなくコンビニで食品を買う人も増えています。

家の近くにお店がたくさんあって買い物がしやすいコンビニ、ドラッグストアの業績が好調な点も気がかりです。ショッピングモールと競合する業種ではありませんが、お客さんが自宅の近くで買い物をしたがっていることを示しています。

今は遠くにあるショッピングモールに買い物に出かけているお客さんも、5年後、10年後は体力的に厳しくなるかもしれません。小売業として長い歴史があるイオンのお客さんには高齢者も多いですが、物理的にお店が遠い弱点はどうしようもありません。

便利なネットショッピングはお客さんをモールから遠ざける

ネットショップが提供する買い物の利便性は、お客さんをショッピングモールから遠ざけてしまう力を持っています。近年、家電量販店の業績が悪化していますが、いくつかのカテゴリではネットショップの影響力が目に見える形になっています。

実店舗はネットショップに価格で負けることが多いですが、価格で勝てば買い物に来てくれるかと言えばそう単純ではありません。自宅に届けてくれる利便性に慣れてしまえば、価格が高くてもネットショップで買うようになる可能性もあります。

特に田舎ではそうなのですが、ショッピングモールの中には東京や大阪で人気になっている有名店、人気店が入っています。地元のお店では買えない商品が売っているため、お客さんはわざわざショッピングモールに出かける理由があります。

しかし、全国の人気商品が買えるという点においては、ネットショップもまさに同じ付加価値を提供しています。現在、ネットショッピングで洋服が売れ始めていますが、これは地元の品揃えに不満だった人たちが利用しています。

ショッピングモールは単なる物販だけではなく、飲食やイベントを含めた総合的なエンターテイメント体験を強化しています。買い物以外にもショッピングモールの魅力はありますが、買い物がショッピングモールに出かける主な動機です。

例えば、洋服をネットショップで買うようになれば、飲食やイベントなどの他のサービスも利用してもらえなくなります。ショッピングモールの立場では総合的な体験をしてもらいたいのですが、ネットショップに負けてしまうと来店してもらえません。