大手飲食チェーン店はなぜ宅配サービスをしなければならないのか

大手飲食チェーン店はなぜ宅配サービスをしなければならないのか

ファミリーレストランやファーストフードなど、大手飲食チェーン店の中にも宅配サービスを提供している企業が増えています。これは宅配サービスが儲かるから行うというよりは、やらなければお客さんが流出してしまう厳しい競争環境になっているからです。

インターネットや物流の充実によって、今後は宅配専業の飲食店が出てくるのではないかと思っています。実店舗対ネットショップほどの激しい競合ではないと思いますが、飲食店対インターネット宅配専業の飲食店のような形になるのではないでしょうか。

飲食店における宅配サービスは主に個人店が行うものだった

飲食店の宅配サービス(出前)は昔から存在していますが、大企業が行うものではなく、小規模の飲食店が行うものというイメージでした。宅配サービスで注文ができるカテゴリも多くはなく、すぐに頭に思い浮かぶのは寿司、ラーメン、蕎麦などです。

宅配をやるやらないは店主の考え方次第で、特にビジネスのフォーマットとして確立しているようなものではありませんでした。昔はもっと宅配の配達を目にしていた気もするのですが、最近は配達しているところを見かけることも少なくなっています。

飲食店の店舗運営に掛かる経費は基本的にはすべて固定費なので、お客さんがいなくてもお店を開けていれば費用が発生します。従業員に支払う人件費は作業に関係なく発生する固定費ですから、お客さんがお店にいない状態では人件費の無駄が発生しています。

人件費を無駄にするくらいなら何かやった方がいいので、お客さんが来ないなら配達しようというのが宅配サービスになります。宅配サービスは何かと手間が掛かるものではありますが、何もしないよりはましなので売上が欲しいお店は宅配サービスを始めます。

大手チェーン店は十分な集客が見込めていたため、宅配サービスを行うような発想はこれまで持っていなかったと思います。大手チェーンの宅配サービスと言えばピザがよく知られていますが、ピザは最初から宅配専用で利益を出すために宅配専用の店舗設計を行っています。

小規模の飲食店も宅配サービスをやらずに売上が稼げることが一番なのですが、それが難しくなれば宅配サービスを始めます。儲かるので積極的にやるというものではなく、お店の売上を少しでも増やすために大変だけど取り組むというものです。

インターネットの登場で宅配注文が受けやすい環境ができる

インターネットの登場は様々なビジネスに影響を与えましたが、飲食店のビジネスのあり方にも大きな変化をもたらしています。オンラインで安く簡単に情報をやり取りすることができるので、お客さんは注文がしやすく、お店側は宣伝がしやすくなっています。

スマートフォンの利用者が増加したことで、お客さんとお店の関係は今まで以上に密接な関係になっています。ネットショッピングでは商品の売買がスマートフォンで簡単に行われているように、飲食店の取引もオンラインで行われるものが増えて来ます。

宅配サービスを利用するお客さん側の立場からすると、思いついた時にすぐにインターネットを使って注文できることは便利です。飲食店を予約するために電話をすることはさほど手間ではないのですが、宅配の注文を電話ですることには面倒くささを感じることがあります。

飲食店の場合は実際に出かけるので真剣ですが、宅配の場合は面倒くさくなってやめてしまうことがよくあります。宅配の注文を確実に受注するためにはお客さんに手間を掛けさせないことが重要で、インターネットはお客さんの手間を減らす効果があります。

お店側からすると注文がもらいやすくなっていますが、それ以外にも、様々な点でローコスト運営が可能になっています。例えば、パンフレットはメニューや価格を変えるたびに印刷や配布のコストが掛かりましたが、WEBではそういったものが掛かりません。

全国のお客さんにパンフレットを見てもらうのに、WEBを更新するだけで簡単に済ませることができます。さらに、これまでの紙ベースのものとは異なり、豊富な写真や動画で商品の魅力をプレゼンテーションできるので、注文をもらえる確率も高くなります。

将来的にインターネット宅配専業の飲食店が出てくる可能性がある

これまでは宅配専業の飲食店ですぐにイメージするものとしては、ピザと寿司くらいしかありませんでした。ピザは利益を大きくするためのローコストオペレーションを構築しており、店舗は狭い調理スペースしかなく、立地も良くない場所にあることが多いです。

宅配を行っていた小規模飲食店は店舗との掛け持ちでやっているところが多いですから、宅配専業のお店のように効率よく業務が行えません。また、インターネット登場以前は集客をすることが難しく、宅配専業ビジネスを成り立たせることが困難でした。

飲食関連の新しいサービスとして、弁当の注文と配送を請け負ってくれるごちクルというサービスがあります。これはWEBサイトの作成、注文の受注、商品の配送と、飲食店が行う宅配サービスの業務のほとんどすべてを代行してくれるものです。

飲食店側の業務をほとんど代行してくれるので、サービスの月額固定費が小さければ確実に利益が出るサービスだと思います。実際に売れた分から手数料を支払うような契約であれば、お店側が損をすることもないのでやってみようかと考えるお店も出てきます。

飲食店の宅配代行サービスが充実して、儲かることが分かれば、宅配専業の飲食店が出てくるのではないかと思っています。好立地に広いお店を持つ必要がないため固定費が小さく、受注から配達まですべて丸投げして調理に専念できるなどのメリットがあります。

飲食店のビジネスは立地に左右されることが多く、また、固定費も大きいので経営のリスクは大きいです。インターネットを活用した宅配専用ビジネスでそうした飲食店の経営リスクを回避できれば、これから宅配専業の飲食店が増えて来る可能性はあります。

大手飲食チェーン店は宅配事業を行わなければお客さんが減る

インターネットの普及によって宅配サービスが便利になり、利用するお客さんが増えれば、従来の飲食店のビジネスにも影響が出てきます。その影響のほどはまだ詳しくは分からないのですが、ジワジワと飲食店の売上が宅配サービスに流出するのではないかと考えています。

大手飲食チェーン店もこの変化に対応しなければならないので、同じように宅配サービスを行って同質化する戦略を取ります。昔からある大手チェーンは宅配サービスを想定していませんから、実店舗を運営しながら宅配サービスも拡大して行くことは大変です。

飲食店とインターネット宅配専業の飲食店の関係は、実店舗とネットショップの関係によく似ています。いくつかの小売業では仕方なしにネットショップを運営していますが、お店にまったく魅力がなく、ネットショップ専業企業に歯が立ちません。

今はまだインターネット宅配専業の飲食店は多くないのですが、将来それが出てくれば、やはり既存の飲食店は売上を奪われることになりそうです。実店舗をやりながらインターネットもやるというやり方では、インターネット専業企業に勝つことは難しいです。

しかし、飲食店と宅配サービスが異なる点は、飲食店にはよりエンターテイメント性があることです。家族や友人とコミュニケーションを取りながら食事をすることは楽しいですが、自宅では騒ぐことが難しかったり、雰囲気がいまいちだったりします。

この点で、飲食店の店舗を訪れる動機がありますから、エンターテイメント性を高めることで宅配サービスに対抗できる余地があります。お客さんは便利な宅配サービスの方へと流れて行きやすいですから、飲食店は常にお客さんに働きかける必要があります。