小規模の飲食店はクレジットカード決済を導入するべきか

小規模の飲食店はクレジットカード決済を導入するべきか

テクノロジーの進化によって、スマートフォンでクレジットカード決済をすることが可能になっています。導入にあたって大きな初期費用が必要になることもないので、小規模の店舗でもクレジットカード決済を導入するケースが増えて来ると予測されています。

クレジットカード決済によりお客さんの利便性は増しますが、これにより新規のお客さんが増えることはあまり期待できません。クレジットカード決済は新規顧客を得るためのものではなく、既存顧客の満足度を高めるための投資だと言えます。

クレジットカード決済の手数料を負担だと考えるお店が多い

私も店員の時はクレジットカードを処理する業務をしていたのですが、お客さんにクレジットカードを出されると心の中でがっかりしたものでした。詳しい手数料は気にしていなかったのですが、なるべくならクレジットカードで売りたくないと多くの店員が考えていました。

例えば、飲食店では原価30%、人件費30%、その他販売管理費30%、利益が10%が好ましい収益構造だと昔から言われています。利益10%から手数料を5%引かれると利益が半分になりますが、実際には利益率10%もないので、少ない利益から手数料を取られてしまうと物理的にも精神的にもガクッと来ます。

相対的に利益が小さい小規模の飲食店では、特にクレジットカードでの支払いが嫌われています。昔、小規模の飲食店の経営者さんに話を聞いたことがあるのですが、順調に食事が終わって、支払いの時にクレジットカードを出されるとがっくり来るそうです。

クレジットカード決済の有無が飲食店の売上にどれだけ貢献しているかは、その効果のほどを正確に検証することは難しいです。ただ、クレジットカードが使える競合店もたくさんありますから、自店だけやらないというわけにもいかず、導入するお店が増えます。

クレジットカードの利用を促すために、クレジットカードで買い物をするとポイントなどの特典が付くことが当たり前になっています。お客さんはポイントを狙ってクレジットカード決済を利用するようになり、クレジットカードの上手な使い方を紹介するメディアも多いです。

クレジットカードの利用に特典が付く動きは今後も続いて行き、今よりもさらにクレジットカードの利用がお得になります。お客さんは多くのお店でクレジットカードが使えることを望むようになり、お店へプレッシャーを掛けて来ることになります。

サイゼリヤはクレジットカードを導入していないことで低価格

大規模チェーン店ではクレジットカードを利用できることが当たり前になっていますが、その中では人気飲食チェーン店のサイゼリヤでは使えません。私はサイゼリヤをあまり利用しませんが、クレジットカードの支払いができないことはどこかで聞いたので知っています。

サイゼリヤが特にアピールしなくても、クレジットカードが使えないことをお店の特徴として広く認知させることができています。クレジットカード決済がないことによるマイナスの効果は測定できませんが、クレジットカード決済がないからといって人気店になれないわけではないことを証明しています。

サイゼリヤは低価格にもかかわらず美味しい料理を提供していて、インターネットやメディアでも頻繁に言及されている人気のチェーン店です。低価格の理由については様々な経営努力のたまものであって、一度何かの記事で店舗運営の効率化が事例として紹介されていました。

サイゼリアが提供している低価格で満足な品質の料理を見ると、お客さんもそのコスト削減の努力を感じることができます。「サイゼリアはクレジットカードが使えない分価格を下げています」と説明されると、多くのお客さんが納得できるのではないでしょうか。

飲食店の多くは薄利多売のビジネスですから、クレジットカード決済の手数料が与える利益への影響は大きいです。大企業であれば手数料もビジネスの一部だと考える余裕もありますが、手数料の支払いを回避できるのであればそれに越したことはありません。

しかし、お店にクレジットカード決済や電子マネーの導入を希望するお客さんの圧力が強まっているため、将来的にはクレジットカード決済や電子マネーが使えるお店が増えると考えています。あるいは、サイゼリアのようなファンを抱える企業であれば、自社で利用できるプリペイドカードなども選択肢としてあります。

クレジットカードは買い物のための借金から決済手段の一つへ

クレジットカードは借金であると考えられていた時代は、お店側にとってもクレジットカード決済の導入は充分に価値があるのものでした。クレジットカードには買い物金額を分割で支払う仕組みがあり、これによってお客さんも高額の買い物がしやすくなります。

クレジットカードがあるからこそ生まれる買い物があり、クレジットカードがなければ生まれない買い物がありました。クレジットカードを使うことによって生まれる買い物があれば、売上が欲しいお店側もクレジットカード手数料を支払うことに同意します。

お客さんの買い物に対する考え方も変化していて、将来の給料をあてにして、クレジットカードで買い物をするような人をあまり見かけなくなりました。景気が悪いので借金をしたくないという理由もありますし、家具、家電の価格が下がっていることもあります。

金額の小さな買い物でもクレジットカードが使えるようになっていますが、これらの買い物はクレジットカードがなくても生まれる低単価のものです。クレジットカード手数料を支払うお店側にとっても魅力は小さく、支払手数料を恨めしく思うばかりです。

景気が良かった二十数年前とはクレジットカードの役割が変わっていて、借金による消費の前倒しから、買い物を便利にする決済方法へと変化しています。決済手数料も3.2-3.5%と下がって来てはいますが、売上規模の小さいお店にとっては負担です。

クレジットカード手数料が経営を圧迫しているような話は聞きませんが、利用者が増えれば支払う決済手数料も増えます。クレジットカード決済がなくても大きな問題がないのであれば、なるべく導入したくないと考えるお店の方が多いのではないでしょうか。

クレジットカード決済は強いお店がさらに強くなるためのもの

クレジットカード決済手数料はお店の利益を減らしますが、クレジットカードが使えることでお客さんの利便性を高める効果があります。また、クレジットカードが使えればポイントが貯まりますから、ポイントを貯めたいお客さんに満足してもらえます。

ただ、あくまでもそれは副次的なもので、飲食をするお店を決める際には美味しいかどうかが一番重要なことには変わりありません。支払方法でどの飲食店を使うかが決まることはほとんどないはずで、豊富な支払方法があるに越したことはない程度のものです。

お客さんが喜んでくれるのであれば、利益を少々減らしてもかまわないと考えているお店は導入するべきです。クレジットカード決済を導入すれば、すぐにでも利益が増えるのではないかと期待しているのであれば、これはおそらく起こらないです。

飲食店がクレジットカード決済の手数料を支払って、お客さんの飲食体験をさらに快適なものにしようというのがクレジットカード決済導入のあり方です。料理、サービス、雰囲気などで既にお客さんに人気になっている飲食店が、さらに顧客満足度を高めるために導入するのが一番好ましいシナリオではないかと思います。

ぐるなびや食べログを利用するお客さんが増えたことで、飲食業界全体が活性化されていますが、逆に競争が激しくなっている側面もあります。お客さんは次から次に新しい飲食店を見つけて利用するため、一つのお店を継続して利用することが減ります。

常連のお客さんをたくさん抱えている人気の飲食店も、そうしたお客さんが他店へ流出しないようにしなければなりません。クレジットカードを利用したいと希望しているお客さんが増えているのであれば、対応した方がお客さんを失うリスクが小さくなります。