Amazonは自社で商品を配達するようになるかもしれない

Amazonは自社で商品を配達するようになるかもしれない

Amazonでは物流費用の増加が問題になっていて、将来的な自社物流の展開について触れている記事があります。Amazonがお客さんから支持される理由は商品の独自性ではなく、豊富な品揃え、そこそこの価格、配達など、買い物の利便性によるものです。

今後も取扱商品を拡大して売上を増やしていくことを考えると、物流業務はできるだけ自社で内製しようとするのではないかと予想しています。配達のクオリティを究極的に高めようとする場合(当日配達、短時間配達など)、外部の運送会社に配達業務を依頼し続けていてはサービスレベルにも限界があります。

EC化率はまだ高くないが物流費用では問題が発生している

小売業の流通総額に占める「何らかの形でオンラインが関与した流通総額の割合」をEC化率と言うのですが、現在は3%程度と小さいものの順調に数字を伸ばしています。既存の小売業への影響も現れていて、家電量販店は厳しい価格競争に巻き込まれています。

オンライン小売業はイノベーションに満ちあふれていて、お客さんに便利な買い物体験を提供するため、既存の小売業とは全く異なる新しい買い物体験を次々に生み出しています。既存の小売業とネットショップの競争は売上を奪い合うゼロサムゲームになるため、競争の激しさは増し、利益率は悪化して行く可能性が高いです。

Amazonの荷物が増えて運送会社の負荷が高まっていて、運賃の値上げを迫られていると記事にあります。私も物流の仕事に携わったことがあるのですが、基本的には荷物が増えることは良いことで、荷物が増えれば増えるほど作業効率が高まることが多いです。

宅配便は毎日決まったルートを配達していますから、そのルート内に荷物が少々増えたところで負荷は小さいです。しかし、荷物が増えすぎてトラックを増やさないといけないようになれば、運転手の負荷は下がりますが運送会社の収益性は悪化してしまいます。

現在のEC化率がわずか3%であることを考えると、これからもっとAmazonの荷物の量が増えることは確実だと言えます。物流費用は利益と関係するので重要なことはもちろんですが、配達の品質もお客さんの満足度に影響を与えるので同じく重要です。

今までの小売業の常識からすると、Amazonが商品の配達を運送会社に依頼することは悩むまでもなく当然のことです。しかし、これからAmazonが売上を拡大して数兆円の売上を目指して行く中で、Amazonにとって非常に重要な配達業務がずっと自社のコントロールの外にあり続けていいのだろうかという感じはあります。

Amazonでは一度の注文でたくさんの商品を買うことができる

大手ネットショッピングサイトでは、Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングが上位TOP3の流通総額を持っています。Yahoo!ショッピングはポータルサイトのYahooの一部という感じで存在感が弱く、Amazonと楽天の2つの利用者が多いです。

Amazonは自社で商品を仕入れて販売をする小売事業者ですが、楽天は小売事業者に売り場を提供するモール事業者でビジネスモデルが異なっています。両社がお客さんに提供する付加価値は異なっているため、お客さんは2つのお店を使い分けています。

お客さんがAmazonで買い物をする理由は、Amazonは他のお店よりも便利な買い物ができるからです。この記事の調査によれば、品揃えの豊富さ、商品の探しやすさ、決済の利便性、送料の安さ、在庫の豊富さなどがお客さんからの評価が高い点です。

品揃えや在庫の豊富さ、送料の安さについては、自社で在庫を抱えて販売する小売事業者ならではの強みになっています。Amazonと楽天で決定的に異なるのは物流の点で、小規模事業者が多数集まる楽天では物流においてはスケールメリットが生まれません。

Amazonの利便性を高く評価しているお客さんは、Amazonで自分が必要な商品がすべて買えるようになれば良いと考えています。日本にもアメリカにもAmazon Primeという送料無料のサービスがあるのですが、アメリカではAmazon Primeの利用者の単価は高いそうです。

ソースは失念してしまったのですが、普通のお客さんと比べて、年間の購入回数、購入金額で数倍も大きいとのことでした。Amazonが買い物の利便性を維持したままでカテゴリを拡大していけば、客単価の高いお客さんを多く生み出すことができます。

自社で商品の企画・開発をしないAmazonの強みは利便性

現在、実店舗でもネットショップでも、オリジナル商品、プライベートブランドの重要性が指摘されています。情報化社会では商品や価格の比較がインターネットを使って簡単に行われるため、全体的に商品の価格が下がってしまう環境になっています。

このような状況の中で商品を高い値段で販売して収益性を高めるには、「ここでしか買えない」価値ある商品が必要になります。小売業全体では独自性のある商品が重要になっていますが、Amazonは独自商品を持っておらずほとんどがメーカー品です。

Amazonの小売業としての強みは商品の独自性ではなく、取り扱いカテゴリの多さ、豊富な品揃え、そこそこの価格、物流など、買い物の利便性にあると言えます。どこででも売っている商品を扱っているにもかかわらず、お客さんから選ばれているのは、これまでに煮ない新しい買い物体験が支持されているからです。

ネットショップには実店舗と異なり商圏が存在しないため、ベストなネットショップ1店に注文が集中することになります。今のところAmazonがその地位を確保しており、地位を維持し続けるためには物流への投資とカテゴリの拡大がカギになると思います。

お客さんがAmazonに期待する最終ゴールは、「日本中のすべての商品が低価格で買えて、1回の配達でまとめて届くこと」です。Amazonは自社で商品を仕入れて販売する小売業ですから、売上の規模が増えれば増えるほど安売りが可能になります。

物流へ投資する、取り扱い商品のカテゴリを増やす、売上が増える、価格を下げる、この好循環を続ければお客さんを囲い込んで売上を伸ばして行けます。お客さんも便利なお店での買い物に慣れてしまうと、他のお店で買い物をすることが難しくなります。

セブンイレブンが店舗からの宅配に力を入れていることは不安

従来の実店舗を持つ小売業とAmazonでは商品の売り方も在庫の持ち方も異なるため、単純に比較することは難しいです。実店舗側がAmazonと戦う上で最も効果があるやり方は、Amazonと同じことをしてAmazonの強みを打ち消すことです。

Amazonと同じことができる小売業がたくさんあるわけではありませんが、セブン&アイ・ホールディングスはAmazonと競える数少ない企業です。セブン&アイ・ホールディングスは以前からネットショップを持っていますし、店舗からお客さんの自宅へ食事を配達するサービスの拡大も行っていて、ネットショップと配達網の2つを持っています。

セブン&アイ・ホールディングスがAmazonと競争する上で課題になるのは、テクノロジー、全国配送の物流、品揃えなどになりそうです。小売業にはテクノロジーに強い人材がいませんから、外部から人材を獲得して組織を機能させるには時間が掛かりそうです。

物流については既にコンビニの店舗網やノウハウがあるため、それほど大きな問題にならないのではないかと思います。品揃えについては小売業の歴史が長いセブン&アイ・ホールディングスですから、Amazonに追い付くのは難しいことではないと考えています。

仮にセブン&アイ・ホールディングスとAmazonがネットショップで競合した場合、配達サービスではセブン&アイ・ホールディングスが優位です。セブンイレブンは実店舗から宅配を行っているため、繰り返しお客さんと接触することでより親密な関係を築くことができます。

店員がお客さんに商品説明をしたり、高齢のお客さんにはネットショップの使い方を説明することもできます。セブンネットショッピングが伸びているとの話は聞きませんが、宅配サービスとセットで使われ始めれば、高齢のお客さんを囲い込むこともできます。